研究課題/領域番号 |
23300201
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
弓削 類 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 教授 (20263676)
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研究分担者 |
嶋本 顕 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 准教授 (70432713)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 微小重力 / 細胞塊 / 神経再生 / 細胞移植 / リハビリテーション |
研究概要 |
マウスES細胞を微小重力環境で神経細胞へ分化誘導を行うと,極めて効率的にネスチン陽性細胞の細胞塊が得られた.そこで本研究では,微小重力環境において,1. なぜ細胞塊ができやすいか,2. なぜ神経幹細胞へ効率良く分化するか,に関する詳細な解析を行い,万能細胞からの神経分化誘導法として,微小重力環境が有用であることを示す.さらに,3. 微小重力環境で神経分化誘導したES細胞由来の細胞を,脳挫傷による片麻痺モデル動物に細胞移植し,その効果を検討するとともに,4. トレッドミルを用いたリハビリテーションを併用した場合の相加・相乗効果を検討する. 昨年度の結果から,マウスES細胞を神経幹細胞に分化誘導する際,微小重力環境を利用すると通常の1G環境での培養と比較して,細胞接着分子のcadherinの発現が変化し,結果,神経幹細胞に効率よく分化したと考えられた.今年度は,cadherinを介したシグナル,神経分化に関与するといわれているNotchシグナルについて検討した.その結果,微小重力環境を利用した細胞塊では,培養早期にE-cadherin(ES細胞に発現)の発現が弱くなり,代わってN-cadherin(神経幹細胞に発現)の発現が強くなること,このcadherinの変化に伴い,Notchシグナルが早期から活性化していることが分かった. また,in vivoの結果から,微小重力環境を使って分化誘導した細胞を移植した群では,運動機能の回復が早まり,さらにトレッドミル運動を併用することで,機能回復がより早まることが示唆された.損傷部の脳組織からmRNAを抽出し,リアルタイムPCRでBDNFおよびGAP43の発現を経時的に検討すると,細胞移植とリハビリテーションを併用したマウスでは,移植後2週間でBDNFとGAP43の発現が増加することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. なぜ細胞塊ができやすいか,2. なぜ神経幹細胞へ効率良く分化するか,について,cadherinの発現変化とNotchシグナルの活性化の関与が示唆されている.さらに,3. 微小重力環境で神経分化誘導したES細胞由来の細胞の脳挫傷による片麻痺モデル動物への細胞移植効果の検討,4. 細胞移植とトレッドミルを用いたリハビリテーションを併用した場合の相加・相乗効果の検討,について,細胞移植だけでも運動機能の改善がみられたが,トレッドミル運動との併用により,運動機能の改善がさらに促進されること,そしてその促進にはBDNFやGAP43の関与が示唆されている.このように本研究の4つの目的について,進展がみられている.
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今後の研究の推進方策 |
微小重力環境を利用した神経幹細胞誘導において,ES細胞からNestin陽性細胞の効率的に誘導できる要因として,cadherinとNotchシグナルの関与が示唆された.Wntやbeta-cateninを介する経路についても検討を行う. 細胞移植後の神経再生において,運動機能評価でみられた改善がBDNFやGAP43など軸索伸長に関わる因子により神経再生が促進された結果である可能性が示唆された.そこで, motor-evoked potential (MEP)などによる電気生理学的な検討を行い,実際に神経の再生が行われているか(電気的な経路が再生しているか)確かめる. 本成果を原著論文として取りまとめ,発表する.
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