研究課題
当該研究は,体性感覚入力によって,仮想現実的に被験者の脳内に自己運動知覚の表象を誘起する方法を応用し,自己運動知覚の神経科学的機構の解明に寄与することを目的とした。随意もしくは他動的に行われた関節運動では,感覚受容器からの信号が求心性に入力され,皮質感覚野に到達する。そして,複数入力された感覚情報は頭頂連合野で統合される。本研究はさらにこれらの脳賦活部位を刺激することによって,逆に自己運動知覚と脳活動との因果を解明しようとするところに意義があった。将来は,脳卒中片麻痺症例や長期臥床によって運動機能低下を来した症例を対象とした運動機能回復治療方法として発展させるための基盤的研究である。平成24年度は,大脳皮質一次運動野に対して4連発経頭蓋磁気刺激(QPS)することで皮質脊髄路の興奮性を変化させ,その結果として運動感覚知覚がどのように影響を受けるかを明らかにするための実験を行なった。QPSの結果,皮質脊髄路興奮性は増大し,過去の報告と矛盾しない結果となった。それに伴い,体性感覚誘発電位の結果から,1野および2野の興奮性が影響を受けた可能性があった。このとき,運動検出閾値が低下したことから,運動感覚の感度が高まったことが示唆された。このように,平成24年度の研究により,皮質脊髄路興奮性,および体性感覚野の興奮性が変化することによって運動感覚の感度が影響を受ける可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,運動感覚の知覚に関わっているものと推定される脳神経回路網に含まれる大脳皮質の一部位の興奮性を変化させることによって,運動感覚知覚の感度がどのような影響を受けるかを明らかにする実験結果を得ることができた。また,運動前野や下頭頂小葉など,他の部位に対する4TMSを実施する実験をすでに開始しており,おおむね順調であるといえる。
平成25年度は,下頭頂小葉,ならびに運動前野を標的として4TMSを行い,その結果として運動感覚知覚の感度がどのように変化するかを明らかにするための実験を行なう。被験者毎に,脳の形態画像が必要となるため,MRIの撮像を開始した。平成25年度が助成の最終年度であるが,このまま進めることにより当初の計画通りに当該申請研究を完了できる。
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Neuroscience Letters
巻: 541 ページ: 24-28
DOI:10.1016/j.neulet.2013.02.009.Epub 2013 Feb 18.
International Journal of Sport and Health Science
巻: in press ページ: in press
日本基礎理学療法学会誌
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