研究課題
当該研究は,感覚入力によって,仮想現実的に被験者の脳内に自己運動知覚の表象を誘起する方法を応用し,自己運動知覚の神経科学的機構の解明に寄与することを目的とした。随意もしくは他動的に行われた関節運動では,感覚受容器からの信号が求心性に入力され,皮質感覚野に到達する。そして,複数入力された感覚情報は頭頂連合野で統合される。本研究はさらにこれらの脳賦活部位を刺激することによって,逆に自己運動知覚と脳活動との因果を解明しようとするところに意義があった。将来は,脳卒中片麻痺症例や長期臥床によって運動機能低下を来した症例を対象とした運動機能回復治療方法として発展させるための基盤的研究である。まず,機能的磁気共鳴像法を用いて,自己身体運動の動画による視覚刺激中に自己運動錯覚を誘起し,その最中に賦活する脳神経回路網に関する解析を行なった。その結果,動画により誘起される自己運動錯覚には,下頭頂小葉,背側運動前野,腹側運動前野,補足運動野,線条体,島皮質,Extrastriate Body Areaなどの脳神経回路網が関与している結果が示された。さらに,大脳皮質一次運動野に対して4連発経頭蓋磁気刺激(QPS)することで皮質脊髄路の興奮性を変化させ,その結果として運動感覚知覚がどのように影響を受けるかを明らかにするための実験を行なった。QPSの結果,皮質脊髄路興奮性は増大し,過去の報告と矛盾しない結果となった。それに伴い,体性感覚誘発電位の結果から,1野および2野の興奮性が影響を受けた可能性があった。このとき,運動検出閾値が低下したことから,運動感覚の感度が高まったことが示唆された。QPSを用いた一次運動野刺激についての研究から,皮質脊髄路興奮性,および体性感覚野の興奮性が変化することによって運動感覚の感度が影響を受ける可能性が示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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