研究課題/領域番号 |
23300207
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 実 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 教授 (20224644)
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キーワード | 社会参加 / 自動車 / 認知症 / 高齢者 |
研究概要 |
高齢者のモビリティ確保に向けて、高齢ドライバの運転特性を評価し、教育による運転継続と運転断念の流れを明確にし、それを具体的に実施できるようにすることを大きな目的としている。これまでの先行研究において、特性評価、教育システムの提案、バス交通の現状調査などを実施してきたので、本研究では、以下のような取り組みを行う。 (1)高齢ドライバの運転特性のデータ収集の継続と分析:先行研究で計測システムを構築した高齢者講習の実車運転時のデータ収集を2-3箇所の自動車教習所で継続して実施した。(2)高齢ドライバの教育プログラムの妥当性検証および追跡調査:先行研究で提案した高齢ドライバに自身の能力・特性を自覚させる教育プログラムを広く展開し、その妥当性検証を行った。(3)認知症ドライバの検討:先行研究で20例ほどのデータ収集を行った病院の物忘れ外来の患者を対象に、データ収集を行った。分析については、類型化と認知特性の程度による運転への影響について、考察した。(4)超小型電気自動車の適用:運転が困難になってきた層への対応を、具体的なフィールドを設定して検討をした。対応法としては、超小型電気自動車の活用とバス等公共交通の整備を考えた。超小型電気自動車については、最近このような車両を活用しようという機運が高まり、国土交通省での検討もはじまっているが、高齢者の身体特性や生活特性にマッチさせるための課題抽出や、混合交通において安全を担保するための条件の議論、2人乗り化への対応を検討した。(5)バス等代替手段の検討:先行研究において、コミュニティバスを新設した事例の乗車実績等のデータをもとに考察したが、いずれも1 便あたり1 人程度と極めて悪い。自治体で実施したOD 調査などをもとに、今後の対応および対策案を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)高齢ドライバの運転特性のデータ収集の継続と分析:千葉県の柏南教習所、福井県の新田塚教習所、大野教習所の3箇所で、高齢者講習の実車運転時のデータ収集を継続した。合計数は2000件を超え、認知機能検査で第1・2分類の人のデータも約100件収集でき、分類、分析を行った。(2)高齢ドライバの教育プログラムの妥当性検証および追跡調査:教育プログラムが高齢・非高齢者者にどのように有用かを確認するため、若者での実験を1回、高齢者対象で改良版教育プログラムの実験を1回、実施した。その結果、自覚がすくないのは高齢者に特有であり、本プログラムは自覚を促すのに有効であることが示された。(3)認知症ドライバの検討:病院の物忘れ外来の患者を対象に、実際の運転時のドライブレコーダデータを得るべく準備を進めた。(実験開始はH24年度) (4)超小型電気自動車の適用:年度当初に超小型電気自動車2台を購入し、2人乗り改造を行った。(公道では1人乗りとして登録。2人乗り試乗は非公道のみ)福井県大野市でのモニター実験は継続しつつ、高齢者にやさしい自動車開発知事連合の実証実験に参加し、福岡県朝倉市で延べ32名、3車種でのデータを収集し、分析を担当した。その結果、ユーザは超小型ゆえのメリットを感じるものの、現行車種の性能限界も明らかになった。H23年度繰越分において、超小型電気自動車が新型に切り替わり、改造等のベース車として2台導入し、当面、大野市と柏市でのモニター用に加えた。(5)バス等代替手段の検討:福井県大野市をフィールドとして、既存コミュニティバスの問題点を検討した。住民の移動調査やグループインタビューを計画した。(実施はH24年度) 以上、繰越分として一部H24年度に入って実施した部分もあるが、概ね予定とおりの研究がなされた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)高齢ドライバの運転特性のデータ収集の継続と分析:分析・検討に必要な数はそろってきたので、今後は特に、認知機能検査で第1・2分類に該当した人を重点的に検討していく。 (2)高齢ドライバの教育プログラムの妥当性検証および追跡調査:教育プログラムが容易に実施できるようパッケージ化を進め、さらに実証実験を行っていく。 (3)認知症ドライバの検討:実路でのドライブレコーダでのデータ取りを進め、分析を行っていく。 (4)超小型電気自動車の適用:モニター実験を数箇所で続け、運転者の特性と受容性検討を行っていく。さらに、国土交通省での動きに連動して、2人乗り化車の認定制度適用などを進め、この種の車両の有効性検討を続ける。 (5)バス等代替手段の検討:H23年度に計画した、住民の行動調査や、グループインタビューを実施し、さらに交通計画に新しい概念を取り入れたものを検討し、モビリティ継続に資する地域交通計画を構築していく。
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