研究課題
高齢者のモビリティ確保に向けて、高齢ドライバの運転特性を評価し、教育による運転継続と運転断念の流れを明確にし、それを具体的に実施できるようにすることを大きな目的としている。以下、項目ごとに実績の概要を記す。(1)高齢ドライバの運転特性のデータ収集の継続と分析:先行研究で計測システムを構築した高齢者講習の実車運転時のデータ収集を3箇所の自動車教習所で継続して実施し、特に認知機能検査で点数の低い人を中心に分析した。(2)高齢ドライバの教育プログラムの妥当性検証および追跡調査:高齢ドライバに自身の能力・特性を自覚させる教育プログラムの改良版を2箇所で展開し、その妥当性検証を行った。(3)認知症ドライバの検討:共同研究先の病院の物忘れ外来の患者を対象に、約20件の運転データ収集を行い、ドライブレコーダ画像の分析を行った。類型化を行い、医学指標の認知特性との比較により考察した。(4)超小型電気自動車の適用:運転が困難になってきた層への対応として、福井県大野市にて超小型電気自動車のモニター実験を行った。また2人乗り改造車を用いて、公道外にて評価を行い、国土交通省での認定制度創設に向けて議論を行った。(認定制度の遅れにより、認定申請が翌年度への繰越しにより対応した。)(5)バス等代替手段の検討:大野市において、住民アンケート、ヒアリングを行い、移動モデルを作成し、バス交通の需要と供給の関係を検討できるようにした。コミュニティバスの乗車実績等のデータをもとに、デマンド化の効用について考察した。
2: おおむね順調に進展している
(1)高齢ドライバの運転特性のデータ収集の継続と分析:千葉県の柏南教習所、福井県の新田塚教習所、大野教習所の3箇所で、高齢者講習の実車運転時のデータ収集を継続した。累積数は2500件を超え、認知機能検査で第1・2分類の人のデータも約200件収集でき、分類、分析を行った。(2)高齢ドライバの教育プログラムの妥当性検証および追跡調査:教育プログラムがどのように有用かを確認するため、高齢者対象で改良版教育プログラムの実験を1回、実施した。その結果、自覚がすくないのは高齢者に特有であり、本プログラムは自覚を促すのに有効であることが示された。(3)認知症ドライバの検討:病院の物忘れ外来の患者を対象に、実際の運転時のドライブレコーダデータを取得し、分析を行った。(4)超小型電気自動車の適用:福井県大野市でのモニター実験を継続しつつ、2人乗り改造車の評価を、まずは非公道で始めた。(公道上は認定制度を申請し、認可を受けてから次年度実施予定)(5)バス等代替手段の検討:福井県大野市をフィールドとして、既存コミュニティバスの問題点を検討すべく、住民の移動調査やグループインタビューを実施し、その結果を踏まえて移動モデルを作成し、交通計画の検討を行った。以上、繰越分として一部H25年度に入って実施した部分もあるが、概ね予定とおりの研究がなされた。
(1)高齢ドライバの運転特性のデータ収集の継続と分析:分析・検討に必要な数はそろってきたので、今後は特に、認知機能検査で第1・2分類に該当した人の分析を継続する。(2)高齢ドライバの教育プログラムの妥当性検証および追跡調査:教育プログラムが容易に実施できるようパッケージ化を進める。(3)認知症ドライバの検討:実路でのドライブレコーダでのデータをもとに、さらに詳細分析を進める。(4)超小型電気自動車の適用:モニター実験の対象に、東日本大震災の被災地を加え、運転者の特性と受容性検討を行っていく。さらに、国土交通省での動きに連動して、2人乗り化車の認定制度適用などを進め、この種の車両の有効性検討を続ける。(5)バス等代替手段の検討:被災地でのデマンド交通導入例もあわせて分析し、地方地域での交通のあり方について考察していく。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
日本機械学会論文集C編
巻: Vol. 78 No. 794 ページ: 3362-3373
10.1299/kikaic.78.3362
Journal of Mechanical Systems for Transportation and Logistics
巻: Vol.5, Issue 1 ページ: 98-109
10.1299/jmtl.5.98