研究課題
高齢者・色覚異常者・ロービジョン者に日常生活を支障なく過ごせるよう環境の視覚情報を知能的に補償するマルチモーダル画像表示システムを実現するために、平成24年度は高齢者と色覚異常者にとっての問題箇所を若年色覚正常者も含めて最適な配色に知能的に補償する視覚呈示システムの改良と理論的解析を進めた。色情報カテゴリカル基本色領域に割り当て、その領域内で色変換を行うことで、元画像の配色を大きく変えずに視認性を向上させた。また、適切な補償が行なえているかを、実際に被験者を用いていくつかの心理物理学実験を行い、検証した。その結果、本補償の有効性を確認できた。次に、聴覚情報を用いた視覚情報の補償を実現するために、3次元音源制御システムを試作し、その有効性を実験的に検討した。音情報の動きや高低によって環境空間情報を呈示できることを示した。また、受動的に聴覚情報を受け取るパッシブシステムに加え、操作者が欲しい情報を手や指等で示すことで得られるアクティブシステムも有効であることも示された。さらに、触覚呈示システムによる視覚情報の補償方法について、いくつかの手法を提案・検討した。その1つとして、空間を手でスキャンしながら適時必要な情報を触覚で与えることが可能なアクティブシステムを開発し、その有効性を示した。またこれらのマルチモーダル視覚情報補償システムは、視覚障がい者だけでなく、若年健常者にも情報呈示を補助するシステムの有効が重要であることも示唆された。
2: おおむね順調に進展している
視覚補償システムの最適化を当初よりも時間をかけて進めたため、聴覚補償システムの開発がやや遅れている。しかしながら、並列的に触覚補償システムの開発を前倒しで進めており、総合的にはおおむね順調に進展している。
聴覚ならびに触覚を用いた視覚情報のマルチモーダル補償システムの開発を推進し、試作機を完成させるとともに、被験者を用いた評価実験を行う。また、様々な場面においてシステムを適用できるよう、ハードウェアならびにアルゴリズムの改良を進める。具体的には、視覚情報から知能的に最適な聴覚・食感情報を生成する手法について検討し、視覚障がい者だけでなく、健常者にも有効なシステムの実現を目指す。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)
Journal of the Color Science Association of Japan
巻: Vol.36, Supplement ページ: 236-237
日本デザイン学会誌
巻: Vol.19, No.2 ページ: 28-31
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巻: Vol.19, No. 3 ページ: 174-181