加齢で劣化した視覚特性を有する高齢者には適切な画像補正を施し、色覚異常者には色情報を変換するとともに文字や図形情報を視聴覚的に付加し、また視力が著しく低下したロービジョン者等の視覚障がい者には材質の質感まで含む視覚情報を補完するための聴覚・触覚情報を付加することで、日常生活を支障なく過ごせるよう環境の視覚情報を知能的に補償するマルチモーダルシステムを開発するために、高齢者や色覚異常者の各視覚特性を測定・定式化するとともに、ロービジョン者の視覚補償のために視・聴・触覚間の相互作用も解明・定式化し、補償効果の定量的評価法を提案した。 ロービジョン者等の視覚障がい者に対して、2次元画像あるいは3次元空間の形状情報を効率よく音情報に変換して出力するシステムを試作し、視覚健常者への情報伝達ツールとしての有効性についても併せて検討した。具体的には、音響呈示パターンやタイミング等を変化させた条件間で有効性を測定・比較し、適切なパラメータを取得した。また、視覚情報を触覚情報で補償するシステムを開発し、その有効性を実験によって検証した。この特性は個人差が大きいことが判明したため、パラメータ値の共通化手法について検討した。さらに、視覚情報の補正技術の一般化・精緻化を図り、ユニバーサルデザインツールの性能向上も実現した。
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