研究概要 |
本研究では,高齢者の転倒に密接に関係する下肢筋力,歩行機能,バランス機能を定量的に評価し,転倒リスク指標を構築し,様々な身体機能を持つ1000人規模の調査において横断的研究を行うとともに,100名規模の追跡調査による縦断的研究を通して,その有用性を示すことを目的とする. H23年度の目標は,1.歩行機能を計測するための計測装置を実用レベルまで高めること,2.開発した計測装置から歩行機能の定量的評価指標を構築するとともに,横断的研究の中から下肢筋力を含め,転倒リスク指標を構築すること,3.開発した計測装置や指標等を利用した介入について縦断的研究をスタートすることが挙げられた. その結果,1は歩行機能計測器の無線通信方式の精度を高めるとともに,独自に開発している回路設計を工夫することでサンプリング周波数,信号処理性能などを高め,より詳細に歩行機能が計測・評価が可能なよう再構成ができた.そのため歩行のメカニズムにまで踏み込んだ評価が実現できることとなった.2は下肢筋力については横断的見地からほぼ確実と言える転倒リスク指標が構築でき,歩行機能についても歩行のメカニズムに基づいた評価を行うことができ,間違いないと考えられる指標を構築できつつある.3は虚弱高齢者を含む153名の転倒予防の介入・追跡調査を行うことができ,計測の意義,行政機関との連携関係,効果的な転倒予防について開発した計測システムの実用性の検証が継続的に実施できている.以上の結果より,転倒予防を実現するための計測・評価指標の構築,実践的な検証,追跡による科学的根拠の構築に向けて研究が順調に進められている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は追跡調査による縦断的研究を中心に進める.その中から本研究で開発した計測システム,評価指標を検証し,科学的根拠を明らかにする.さらに,介入による医療費・介護保険費用の削減効果と身体機能の変化,医療と保健(介護を含む)の連携にまで視野を広げられる状況であるため,すべてを本研究期間では明らかにできないが,方向性を示せるよう取り組むこととする. 本研究は発展的かつ確実に進められており,大きな問題点は見られない.
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