研究課題/領域番号 |
23300213
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
山下 和彦 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (00370198)
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研究分担者 |
佐藤 満 昭和大学, 保健医療学部, 准教授 (10300047)
太田 裕治 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (50203807)
井野 秀一 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (70250511)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 転倒リスク指標 / 虚弱高齢者 / 下肢筋力 / バランス機能 / 歩行機能 / 計測システムの開発 / 足部のケア / 運動指導 |
研究概要 |
[研究目的] 高齢者の転倒骨折が社会的問題であり,後期高齢者では要介護要因の上位に挙げられる.高齢者の転倒予防のために,身体機能の観点から下肢筋力,バランス機能,歩行機能の3要素の向上が重要である.本研究ではこの3要素を定量的かつ簡便・安全に計測可能なシステムを開発することを目的とする. [研究成果] 本研究では,インソール型重心動揺計の通信方式にBluetoothを採用したことで,通信距離が拡大し,複数のPCを並列使用することで同時計測による大規模介入研究の準備を進めた.解析用ソフトウエアを開発したことで,短時間で計測と解析が可能になった.歩行機能のバイオメカニクスの観点から,床反力計から得られる知見と同様の結果が得られ,簡便かつ安全に高い精度で計測が可能であることがわかった.バランス機能の観点からは,従来の重心動揺計と0.95以上の相関が確認され,転倒リスク指標構築のための有効性が確認された. 上記の基礎的知見の構築と並行して,H25年度は H24年度に引き続き,追跡研究を進めた.具体的な介入方法は,a.足部ケア実施群,b.運動実施群,c. a,bの両方を実施する群,d.対照群(コントロール群)とし,身体機能が低下した虚弱高齢者から糖尿病などの慢性疾患を持つ群などを含めた高齢者300人の追跡研究を行った.これらの対象者の下肢筋力,歩行機能,バランス機能等の基礎データの取得,疾病などの病歴情報,医療費を取得し,詳細に検討した. 成果の一例を挙げる.A.転倒骨折に関連する骨密度の低下を推定するための回帰分析を行い,股関節内転筋力,体重,基礎疾患から推定ができることがわかった.B.転倒リスクの高い高齢者の歩行相の解析,踵接地時および爪先離床時の圧力値の分析から転倒リスク指標の構築を行った.C.開発した計測システムによる姿勢制御能の評価を行い,有効性が推察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度に設定した課題はほぼ達成している.本研究では,2次予防対象者などの身体機能が低下した虚弱高齢者や慢性疾患を持つ健常高齢者を対象に,身体機能計測の立場から転倒リスク指標を構築している.本指標は介入研究,追跡調査の観点から有効性を検討している.現在は2年目の追跡調査の過程にあり,医療費などの医療経済的側面,健診結果などによる血液データの分析にまで踏み込んで研究が実施できている.
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今後の研究の推進方策 |
現在は縦断的研究の途上にあるため,大きな研究方針の変更は行わない.これまでの約1000名の高齢者の身体機能計測データ(下肢筋力,歩行機能,バランス機能,足圧分布などの足部の筋骨格系を示す基礎データ等),アンケート,健診データから得られた血液や血圧データ等について平行して横断的な詳細分析を加えている. 介入研究として,足部のケア,運動指導,セルフケア指導等を組み合わせながら進めており,本研究で提案する転倒リスク指標や介入方法の要点について新しい知見が報告できる見込みである.連携先の行政機関,参加している対象者とも良好な関係にあり,研究成果のフィードバックについても市民の理解を得つつ進める方針である.
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