研究概要 |
本研究は大脳皮質運動関連領野の損傷による下肢運動麻痺患者に対し,知的エージェントを介在させることで持続的な訓練を動機づける仮想空間移動型BCIリハビリシステムの開発を目的とする.平成23年度は,本研究でブレイン・コンピュータ・インタフェースのための脳波特徴量として注目する事象関連脱同期(ERD)について,運動企図に関連するERD発現要因の分析に取り組んだ.特に,1人称視点からの運動観察(視覚)と機能的電気刺激による体性感覚および随意的な運動企図の有無が,ERDの発現にどのように寄与しているかについて,各要因を網羅する実験条件を設定して比較を行った.その結果,(1)体性感覚刺激は視覚フィードバックを補助しERDを効果的に発現させること,ならびに,(2)随意的な運動企図と1人称視点からの観察はそれぞれ独立にERDを生じさせることに貢献するが,これらを同時に提示するとコンフリクトを生じることが示された.このことより,ERDは被験者の運動主体感もしくは自己運動に対する感覚予測を反映して発現している可能性が示唆された.また被験者のリハビリへの取り組みの履歴と機能回復の傾向から訓練課題の提示パターンを調節する知的エージェントの動作アルゴリズムの開発に着手した。さらに,当初はH24年度以降に計画していた下肢前脛骨筋の随意筋活動により駆動する電動車椅子システムを開発し,健常被験者の下肢筋力の回復訓練効果を検証した.下肢筋電図の時系列パターン識別法にも取り組み,少ないEMG電極数(2チャネル)で,複数の足ジェスチャを識別する手法を開発した.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度も引き続き当初計画通り研究を遂行する.特に,視覚情報と体性感覚情報の間に齪酷が生じるような実験条件において,ERDの発現が受ける影響を分析することによってERDの生成機序を明らかにすることができる可能性がある.これにより,具体的な運動機能回復訓練手法の開発だけでなく,本研究の学術的な価値を高められるようにしたいと考えている.
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