研究課題/領域番号 |
23300216
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
近藤 敏之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60323820)
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研究分担者 |
野澤 孝之 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60370110)
伊藤 宏司 立命館大学, 理工学部, 教授 (30023310)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | BCI / ニューロリハビリテーション / エージェント / 運動イメージ / 機能的電気刺激 / 下肢運動機能回復 |
研究概要 |
本研究は大脳皮質運動関連領野の損傷による下肢運動麻痺患者に対し,知的エージェントを介在させることで持続的な訓練を動機づける仮想空間移動型BCIリハビリシステムの開発を目的とする.平成24年度は,本研究でBCIの脳波特徴量として注目する事象関連脱同期(ERD)について,1人称視点からの運動観察(視覚)と機能的電気刺激による体性感覚をフィードバックとして与える条件下でERDの発現訓練を行い,健常被験者による訓練成績の評価を行った.その結果,視覚および体性感覚のフィードバックが与えられる条件下で有意な成績の向上を確認した.このことから,運動想像によるBCIの訓練においては身体性への意識(運動主体感や身体保持感)を強化する感覚情報の適切な提示が有効である可能性が示された.また,運動企図と運動学習に関する基礎研究としては,ロボットマニピュランダムを用いた視覚運動回転変換下の上肢到達運動学習において,①能動的に運動を生成する場合,②受動的に運動を経験させた場合,および,③運動企図に基づき受動的に運動を経験させた場合,の3条件で運動学習成績を評価した.その結果,受動的な運動学習は能動的な運動学習より有意に成績が低いものの,未学習時と比べて有意に向上していること,ならびに,受動的な運動学習において運動企図の有無は学習成績に影響を及ぼさないことを確認した.このことから,(1)受動的な運動経験でも体性感覚に関する運動技能の一部は獲得される可能性があること,また,(2)能動的学習と受動的学習の差は,運動企図の有無ではなく,運動計画・運動制御自体にある可能性が示唆された.すなわち,リハビリテーションにおいては,運動を想像するだけでなく,随意的に筋を収縮させようとすることそれ自体が回復に必要であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者担当の脳波計測,機能的電気刺激に関する実験は基礎となる部分を完了し,国際会議でも報告済みである.本年度はこれらをジャーナル論文としてまとめる.また震災の影響により進捗が遅れていた研究分担者のエージェント設計の部分は大きく伸展し,本年度よりリハビリテーションシステムとの統合に着手可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度も引き続き当初計画通り研究を遂行する. 研究代表者の近藤は,特に,視覚情報と体性感覚情報の間に齟齬が生じるような実験条件下で,ERDの発現が受ける影響を分析する.これにより,ERDの生成機序を明らかにすること,すなわち,身体性(運動主体感や身体保持感)を確立すること(たとえば自分の腕が実際には動いていなくても,視覚と体性感覚を騙すことで動いているように認知させること)がERDの発現に寄与するのか,それとも,運動前野や一次運動野の活動(運動の企図,運動計画,運動指令の生成)がERDに関係しているのかを明らかにすること,ができると考えられる.また,運動の随意性(能動的運動とロボットを利用した受動的運動)の違いが,ERDをはじめとする脳波特徴量に及ぼす影響を分析する.この実験の結果は,具体的な運動機能回復訓練手法の開発だけでなく,脳内の感覚運動連関機能の解明に向けた学術的な側面からも意義深いと考えられる. 研究分担者の伊藤(立命館大学)は,H24年度に開発したERDに基づくBCIロボットリハビリテーションシステムの評価実験に着手する.また研究代表者が実施するEEG-FES実験におけるERDの分析に対し,密な情報交換を行い一体となって研究を推進する計画である.
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