研究概要 |
四半世紀前に研究代表者が国際学会ISBで指摘した「スポーツ動作における体幹の重要性(Fukashiro,1988)」は、現在、ダイナミックな運動のパフォーマンスを高める核として一般に認知されるに至った。これによって例えば、北京オリンピック陸上男子400mリレーの銅メダル獲得のように、日本選手が世界で戦える土台を作った。しかしながら、指導現場における体幹の利用や捻転軸の定義は未だ感覚に基づくものであり、自然科学的に明らかになっているわけではない。そこで、本研究では、走・跳・投・打・蹴などのダイナミックな体幹の動きを、次の2点から客観的に究明することを目的とする。1:各動作の肩と骨盤それぞれから回転軸を明らかにする、2:逆ダイナミクスを用いて、体幹の捻転トルクを解析する。 平成24年度は、体幹を上胴と下胴の2セグメントモデルを仮定し、体幹結合部は身体の前面における第十肋骨下端の左右2点の中点と、その中点と同じ高さの胸椎上の点の2点の中点とを仮想の関節とした。実験では、上体の動きを制限するために棒を肩にかついだ状態で、被験者に次の2条件の最大努力の回旋動作を課した。条件1:その場での回旋、条件2:脚の踏み出しによる並進運動を伴った回旋、である。条件2の踏み出しを用いると、条件1の用いない場合に比べて、上胴の角速度と体幹結合部の稔転トルクが増加し、体幹結合部のセグメントトルクパワーつまり下胴が上胴に対して発揮した仕事が増加した。その一方で、体幹結合部が発揮したトルクパワーの正味の仕事は減少した。このように体幹を2セグメントモデルに仮定することによって、体幹稔転の機序が客観的に明らかにすることができた。
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