研究課題/領域番号 |
23300231
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
|
研究分担者 |
古賀 俊策 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (50125712)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 体温調節 / 発汗 / 筋代謝受容器 / 運動 |
研究概要 |
運動に関わる要因としての筋代謝受容器活動が運動時の体温調節中枢に及ぼす影響を検討した.環境温25C°,相対湿度50%の環境制御室内で実験を実施した.健康な大学生を被験者とし,最大酸素摂取量の40%程度の自転車運動を30分間,次の2条件で実施した. 1)最大酸素摂取量の40%程度負荷の運動のみ実施する. 2)右手で最大随筋力の35%の負荷で,静的掌握運動(一定の強さで握る運動)を1分間実施する.運動終了直前に250mmHgのカフ圧で運動と同じ側の上腕を阻血し,筋代謝受容器を賦活する.この状態で,条件1)と同じ自転車運動を実施する.測定項目は心拍数,血圧,自律神経活動,自覚的運動強度,体温,皮膚温,発汗量・皮膚血流量(胸・前腕),全身発汗量および筋代謝受容器活動レベルであった. 発汗開始時や皮膚血管拡張時の時間と体温(食道温など)を条件間で比較することにより,運動に関わる要因としての筋代謝受容器活動が運動時の体温調節機構に及ぼす影響をみた. 筋代謝受容器を賦活した状態で前述の運動を実施したが,発汗・皮膚血管拡張の開始時間等はそれを賦活せずに運動を行った場合と比較して大きな違いは認められなかった.これは運動による中枢からの調節機構の働きが筋代謝受容器からの入力の影響をキャンセルしたのかも知れない.そこで,運動ではなく下肢を43℃の湯で温浴して安静状態で体温上昇・発汗・皮膚血管拡張を引き起こす方法を用い,再検討を行った.筋代謝受容器を賦活させて下肢温浴を行った場合とそれを賦活せずに下肢温浴を行った場合では前者の条件での発汗・皮膚血管拡張の開始時間等は著しく早くなり,また,その量も多かった.このことから筋代謝受容器活動は体温調節中枢に影響するが,その影響は運動時より安静時でみられる可能性がある.また,運動に関わる他の要因と他の調節系との関連からさらに体温調節中枢への影響に検討を加えた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動に関わる要因としての筋代謝受容器活動が運動時の体温調節中枢に及ぼす影響を,運動によって体温調節反応を引き起こし,その反応が筋代謝受容器賦活でどのようになるのかで検討しようとした.しかし,研究実績の概要で説明したように,この方法では筋代謝受容器が体温調節中枢に及ぼす影響を明らかにできなかった.そこで,体温調節反応を引き起こす方法として安静時下肢温浴を用いて,追加実験を実施した.その結果,筋代謝受容器賦活が体温調節中枢に影響する可能性をみることができた.このように,当初,計画していた方法の問題点や課題が明らかになり,方法の見直し,また,体温調節系の新しい観点等の検討を行った.このような理由で,おおむね順調に計画が進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23・24・25年度と3年間で運動に関わる要因と精神性要因が運動時の体温調節中枢に及ぼす影響を明らかにしようとしている.24年度において,筋代謝受容器が体温調節中枢に及ぼす影響は運動時と安静時で異なるという可能性が出てきた.これは当初の計画ではみられなかったことである.また,今年度は精神性ストレスが運動時の体温調節中枢に及ぼすを精神性刺激装置を新たに作り,検討しようとしている.これまでの課題も残されていることから,次のように研究推進方策を検討する. 1)本年度の研究に当たっては,24年度の課題(運動が安静か)から方法を再度検討し,実施する. 2)進展が不十分であると思われるこれまでの課題も一部実験できるようにする.特に,24年度の課題を再度検討する. 3)実験方法の確立・データ解釈等で連携研究者や海外研究協力者の助言のみではなく,実験への参加を依頼する.
|