研究課題/領域番号 |
23300236
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
矢内 利政 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (50387619)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 野球 / 水泳 / 外傷・障害 / 肩 / バイオメカニクス |
研究概要 |
本研究の目的は、競技スポーツとして野球(投手)ならびに水泳を行なっている被験者を対象として、①定期的に年2回、競技動作中に可動する肩甲上腕関節の動作範囲を実測・蓄積することにより、投動作および泳動作のおける肩甲上腕関節の動作の特徴を把握し、個人差や各計測時における肩関節障害の有無による違いを分析すること、②パフォーマンス時に計測された肩甲上腕関節運動時系列データの各局面について、計算解剖学的に定義された標準骨格モデルを用いて、肩甲骨と上腕骨との位置関係を計算機上で立体的に再現することにより、肩峰下インピンジメントまたはインターナル・インピンジメントによる腱板圧迫が起こりうる局面を特定すること、③腱板圧迫が起こりうる肩甲上腕関節の動作範囲が頻繁に用いられる動作局面を横断的、ならびに縦断的に分析することにより、腱板損傷を発症しやすいフォームの特徴を探り出すこと、の3点を完了することである。 平成24年度には、初年度に引き続きデータ収集を継続するとともに、これまでに収集したデータの横断分析を実施した。野球については、2013年までに収集した投手51名(プロ野球投手が21名、実業団野球投手が11名、東京六大学野球投手が19名)のデータを分析し、プロ野球投手については5名(24%)、社会人野球投手については2名(18%)、大学野球投手については4名(21%)が肩峰下インピンジメントによる圧迫が投球動作中に生じるという運動学的エビデンスを示した。一方で、コッキング期から加速期に移行する局面である最大外旋時に発生すると考えられているインターナル・インピンジメントについては、それが発生するという運動学的エビデンスは得られなかった。 この横断的分析についての研究成果は、国内外の学会で発表されもの、国際誌への投稿準備中であるもの、その概要を含めた総説は臨床スポーツ医学誌に掲載されたものがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野球(投手)の分析については大変順調に研究が進んでおり、最終年度となる平成25年度には、計画した研究を完了することができると確信する。一方で、水泳についての分析は、遊泳する選手からデータを収集するための方法論(練習用ゴムチューブを用いて泳者に抵抗を加え、一定の位置で泳動作を行なわせる手法)が、泳者の自然なパフォーマンスを妨げる結果をもたらすことが判明したため、その改善に思いのほか時間を要した。現在までに、20名の水泳選手からデータを収集しているが、予定よりも少し遅れ気味である。本年度は、水泳のデータ収集に力を注ぎ、遅れを取り戻すこととする。
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今後の研究の推進方策 |
縦断分析のためのデータ収集を継続して実施することに加え、研究期間3年間を通じて蓄積されたデータを用いて縦断的な分析を行うことにより、『腱板圧迫が起こりうる肩甲上腕関節の動作範囲が頻繁に用いられる動作局面を縦断的に分析することにより、腱板損傷を発症しやすいフォームの特徴を探り出すこと』という本研究課題に最終目的を達成する。この縦断分析により、「肩峰下インピンジメント」と「インターナル・インピンジメント」という二つの主な腱板損傷の発症要因となる動作局面を、各被験者を追跡して計測した肩甲上腕関節運動の中から見つけ出し、発症要因と障害との間の因果関係について深く分析する。
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