研究課題/領域番号 |
23300237
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 筋細胞 / 代謝 / ミトコンドリア / ミオグロビン / 運動 |
研究概要 |
骨格筋の酸素供給機構とその規定因子については不明な点が多い。我々は、骨格筋内の酸素貯蔵体として知られているミオグロビン(Mb)に注目して、筋収縮時の細胞内貯蔵酸素(Mbに結合した酸素)の動態を検出した。実験の結果、Mbに結合した酸素は筋収縮開始とともに解離し、それに付随して細胞内酸素分圧が急進的に低下することが明らかとなった。こうしたMbの振る舞いは、Mbが単なる酸素貯蔵体としてではなく、骨格筋組織の酸素供給機構の一部として機能していることを示唆する。そこで本年度の研究では、Mbとミトコンドリアの相互作用を詳細に検証するために、タグ付きMbの安定過剰発現細胞を構築し、骨格筋培養細胞(L6)へ導入し、myc-Mbの発現状態を確認した。L6細胞を用いてmyc-抗体によって免疫沈降したサンプルを質量分析した。その結果、数種類のミトコンドリア関連のタンパク質が共免疫沈降していた。ただし、バイトタンパク質の回収量に問題があったため、細胞株とタグの変更を検証している。また、Mbとミトコンドリアの生合成機序(因子)についてラットを用いて検証した。ラットの発育期には骨格筋内のMbが次第に増加した。一方、ミトコンドリア濃度は生後間もなく成熟レベルに達していた。このMbの上昇には、カルシウムシグナル(特にCaN活性)が関わっている可能性が示唆された。また、細胞内Mb濃度が上昇することによるミトコンドリア呼吸機能変化を検証するための、ミトコンドリア単離方法や膜透過処理法の確立を図った結果、代謝特性の違い(遅筋 vs. 速筋)やミトコンドリアの多寡(mtDNA量に反映)によるミトコンドリア呼吸機能の差を検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体試料(ラット骨格筋)を用いた相互作用状態(共局在性、共免疫沈降)の検証を概ね進行させることができた。また、Mbとミトコンドリアの共局在の有無を検討するにあたり、MbのcDNA全長を含むベクターを骨格筋培養細胞(L6細胞)に導入し、myc-タグで標識したMbタンパク質を安定発現するL6細胞の樹立を図ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
myc Mbを安定発現するL6筋細胞株を用いて、Mbに相互作用するタンパク質の検討を行う。myc-抗体で免疫沈降し、銀染色によってタンパク質の存在の可能性を確認する。また、プロテオーム解析(Mass Spec, ショットガン解析)によって、相互作用するタンパク質のカタログ作成を試みる。さらに、L6培養筋芽細胞あるいは、筋組織を用いて電子顕微鏡による組織観察を行い、細胞のオルガネラ(特にミトコンドリア周辺)に散在するMbタンパク質の局在性を観察する。
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