H25年度では、Mbの多寡がミトコンドリアの呼吸活性に及ぼす影響を検証するために、昨年度までに樹立したMb過剰発現筋細胞株(myc-Mbを発現するL6細胞)におけるミトコンドリアの呼吸消費速度を検証した。Mbの発現の程度はWestern Blot法によって評価し、ミトコンドリアの酸素消費速度は細胞レベル(膜透過処理)にて評価した。その結果、Mbの発現量が多いL6細胞株ではミトコンドリアの酸素消費速度が高くなる傾向が認められた。さらに、発育期におけるラット骨格筋におけるミトコンドリア呼吸活性を評価した(in vivo 検証)。発育期の下肢骨格筋では骨格筋内のMb量が増加する傾向を示し、ミトコンドリア量も増加していた。その発育期の骨格筋から単離したミトコンドリアでは、その酸素消費速度も高くなる傾向が認められた。以前に我々はミトコンドリアの中にもMbが存在している可能性を示したことも考慮すれば、これらの結果はMbの存在がミトコンドリアに対して直接的に関与し、ミトコンドリアの呼吸機能を上方調節している可能性を示唆するものである。 また、昨年度も検証したプロテオーム解析も再度試みた。myc-Mbを安定発現するL6細胞を用いて、myc抗体で免疫沈降したサンプルの質量解析を実施した。細胞骨格関連タンパク質(収縮タンパク質)やミトコンドリアタンパク質、シャペロンタンパク質などが検出されたが、サンプル間の再現性が十分に確認できなかった。細胞株の変更を含め、再検討を要する課題とした。
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