研究課題/領域番号 |
23300238
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤原 勝夫 金沢大学, 医学系, 教授 (60190089)
|
研究分担者 |
前田 薫 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 講師 (00454687)
外山 寛 金沢大学, 医学系, 准教授 (10172206)
国田 賢治 札幌国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20316003)
清田 岳臣 札幌国際大学, 人文学部, 准教授 (40434956)
淺井 仁 金沢大学, 保健学系, 教授 (50167871)
清田 直恵 大阪保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (90559189)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 動的姿勢制御 / 関節固定 / 事象関連電位 / 上肢運動 / 一過性床移動 / 床振動 / 下腿三頭筋 / 筋電図 |
研究概要 |
動的姿勢制御は、上肢などの随意動作に付随する姿勢制御、一過性の外乱に対する姿勢制御、および周期的な外乱に対する連続的姿勢制御に分類できる。これらの姿勢制御はいずれも予測的になされるがゆえに、外乱に対する準備脳活動と姿勢筋の活動様式との関係が、重要な研究課題となる。しかし、そのいずれにも大きな個体差と試行変動が存在し、両者の関係について十分な検討がなされてこなかった。そこで本研究では、膝関節、股関節および体幹の各関節を固定し、制御対象を足関節に限定することによって、動的姿勢制御の姿勢運動様式を単純化し、両者の関係について検討した。前頭葉を中心とした準備脳活動は、事象関連脳電位(随伴陰性変動:CNV)を用いて測定した。本年度は、高齢者を対象に、上肢屈曲運動、一過性床後方移動、および床振動時の姿勢制御における準備脳活動と姿勢筋活動様式との関係について検討した。いずれの課題でも、姿勢制御様式の適応的変化の速度は若年者に比べて著しく遅かった。上肢屈曲運動では、固定により、下腿三頭筋の活動開始は固定無よりも有意に早くなり、三角筋のバースト開始との間に有意差がなくなった。ただし、若年者と異なり、下腿三頭筋の先行活動は認められなかった。一過性床移動では、床移動後のCoPapの移動位置は、固定により有意に後方になった。下腿三頭筋を含む背面筋のバースト活動開始時間は、固定により有意に早くなった。CNVピークの振幅は、若年者では固定により増加するのに対し、高齢者では有意な変化を示さなかった。床振動では、固定した場合に身体動揺が大きく増大し、適応が極めて困難であった。事象関連脳電位(ERP)の陰性ピークは、固定により前方と後方の両方の変曲点付近に認められるようになった。これは、固定により、その変曲点に対応した下腿三頭筋と前脛骨筋の大きな活動が認められるようになったことに関係していると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ギプス固定の時間を短縮するために、新たな関節固定器具を開発した。それを用いて、高齢者を対象に、膝関節、股関節および体幹の各関節を固定し、姿勢制御対象を足関節に限定することができた。それによって、動的姿勢制御の姿勢運動様式を単純化し、姿勢制御における準備脳活動と姿勢筋活動様式との関係について検討できた。高齢者では、若年者に比べて、関節固定での姿勢制御の適応が遅いこと、および十分な制御様式の適応的変化が生じにくいことを明らかにした。高齢者では、足関節に限局した姿勢制御が行い難いものと考えられた。予定していた実験は全て終了し、分析も終了しつつある。昨年の若年者を対象とした研究については、論文にし投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、高齢者を対象に、バランスボード(特許番号5004174)を用いて下腿筋が主活動となるバランストレーニングを行う。そのトレーニングに伴う足関節を主な制御対象とした姿勢制御の変化について検討する。 被験者数は、30名とする。その中の17名はトレーニング群とし、13名はトレーニングを実施しないコントロール群とする。トレーニング群の人数は、トレーニングを継続できない被験者がいることを想定して数名多く設定する。トレーニング群とコントロール群について、トレーニング期間の前後に、上肢屈曲運動時の事象関連脳電位と姿勢筋活動を測定する。その測定は、最初に関節固定具を装着せずに行い、続いて関節固定具を装着して行う。測定および分析方法は、平成23年度と24年度に準じて行う。併せて、下腿筋力と下腿筋の筋厚を測定する。上記のバランストレーニングは、1ヵ月間行う。トレーニング内容は、バランスボードの軸上に第1中足骨骨頭ないし外果下端が位置するように立ち、ボードの水平バランスを3秒間保つことを50回ずつ反復するものである。その試行の困難度に応じて、立位位置を前後に変えるものとする。 トレーニングの実施状況は、踵挙上の回数、実施時間、実施場所等を記録させて把握する。コントロール群には、1ヵ月にわたって日常生活行動に変化が生じないように指示する。 この一連の測定結果をもとに、足関節を基軸としたバランストレーニングに伴う、高齢者の足関節戦略による動的姿勢制御能の改善効果を明らかにする。
|