研究課題
運動の実施時刻によって脂肪細胞の生理応答が変化することを明らかにしてきた。本年度は,その現象の背景をin vitroで検証した。In vitroでの昼夜はメラトニンの有無によって模倣した。血中メラトニン濃度はper2遺伝子発現のボトム時には高く,ピーク時には低い値を示す。まず,3T3L-1細胞株の時計遺伝子をserum shockにより同調させ、その上で時計遺伝子Period 2, Bmal 1, Rev-erb αの発現リズムを確認したところ,明確なサーカディアンリズムが見られることを確認した。そこで,3T3-L1細胞の分化誘導時からサンプル抽出まで継続的に1mMのメラトニンを添加し,時計遺伝子や脂肪代謝調節関連遺伝子ならびにアディポカイン遺伝子の変化を検討した。その結果,メラトニンは時計遺伝子群の振幅を変化させた。脂肪代謝調節関連遺伝子では,脂肪分解反応に不可欠なホルモン感受性リパーゼおよびペリリピンの遺伝子発現がメラトニン添加によって著しく亢進し,脂肪分解反応も高まった。運動トレーニングによる脂肪分解反応の増強は,メラトニン濃度の高い時間帯に行なった運動トレーニングの方が低い時間帯に行なった運動トレーニングに比べて大きいことを明らかにしていたが,この知見はメラトニンによるホルモン感受性リパーゼおよびペリリピンの遺伝子発現の増加と関係しているのかも知れない。さらに,メラトニン添加でレプチン遺伝子発現が低下し,アディポネクチン遺伝子発現は増加した。そのため,血中メラトニン濃度が高い時間帯(per2遺伝子発現のボトム時)に行なった運動で,レプチン遺伝子発現が低下するのかも知れない。以上の知見は,運動を実施する時間帯によって運動の効果が異なることを初めて細胞・遺伝子レベルで直接的に明らかにしたもので,新しい運動処方法を構築する際のエビデンスとしてきわめて重要なものである。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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