研究課題/領域番号 |
23300244
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
植竹 照雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10168619)
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研究分担者 |
田中 幸夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60179794)
田中 秀幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70231412)
下田 政博 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80302909)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者 / 自転車 / アイカメラ |
研究概要 |
平成24年度に実施した研究内容は大別して二つある。ひとつは、高齢者を対象とする自転車利用状況、特に自転車事故の状況について自損事故を含め被害者・加害者となった事故経験の有無やそれらの事故と日ごろの自転車利用実態との関連を明らかにするために実施したアンケートの回答を詳細に分析したことであり、もう一つは、自転車事故と関係深い安全・不安全につながる行動について大学生と高齢者の両群を比較し詳細に分析するため、アイカメラを装着させて幹線道路および生活道路を自転車で走行させることにより、被験者の注視点を連続的に収録したことである。 アンケート分析結果をつぎのように総括することができる。過去1年間に経験した自転車事故は、①3%のものが加害事故を起こしており、②10%のものが被害事故に遭遇し、さらに③9%のものが自損事故を起こしている。それらの結果と自転車行動との関連を検討すると、加害事故経験者は狭いところで追い越す際の「声掛け」、「合図」行動をしないものが多かった。被害事故経験者および自損事故経験者は「前かご」に荷物を入れる、雨天時に「ポンチョ」を利用するものが多かった。 アイカメラ装着実験の結果の概要はつぎのとおりである。高齢者と大学生の注視点からみた注意行動において、両グルーブで異なる傾向が強い事象は生活道路での「すれ違う自転車」であり、大学生はほとんど注視点を対象事象に移動させないものが多かったのに対し高齢者は多くのものが注視点を移動させていた。逆に両グループで一致する事象、または一致する傾向の強い事象は幹線道路での「駐輪場・駐車場の入り口」および「すれ違う自転車」、生活道路での「玄関・門扉」であり、いずれも注視点を各事象に移動させていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ24年度の研究計画どおり遂行することができ、順調に目的達成に向けた研究を実施しているものと自己評価している。具体的には以下のとおりである。 高齢者を対象とする自転車利用状況に関するアンケートを実施し解析も終了した。自転車走行中にアイカメラを装着した際の注視点挙動を高齢者と大学生について収録し比較検討することができた。特に、若い大学生ばかりでなく、高齢者にもアイカメラを装着させ市街地を走行する際の注視点を収録し分析することができたことについては、被験者の獲得からアイカメラを装着し自転車を走行に至るまでに相当な時間を要すると想定していただけに、特に評価している点である。 以上の結果は、関連する学会ですでに発表しており、論文を投稿する準備に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果は、自転車走行中における若者と高齢者の注視点挙動はほとんど同じであり、若者が特段に不安全行動をとっているとは言い難いことを示唆している。これまでは、自転車事故の特徴として若者が加害者で高齢者が被害者となるケースが多いが、その原因として若者の不安全行動があると予想していた。しかし、その予想がはずれたことになり、高齢者が被害者となることには他の大きな要因があると考えられ、その要因を探りたいと考えている。 現時点で考えていることは、自転車シミュレータを用いた実験および自転車乗車中のバランス能力測定実験、反応時間測定実験である。 具体的には、高齢者と大学生を被験者として、同じ自転車シミュレータのコースを走らせた場合の違反率や事故率を測定するものである。その際の条件をいくつか考えており、ながら運転の影響を検討するため、①音楽を聴きながら、②傘をさしながら、などの条件を課す実験、またアルコールの影響を検討するため、一定量の飲酒を摂取させた後の実験などである。バランス能力測定実験としては、ある一定幅の走行路を設定し、そこを可能なかぎりゆっくりと走行させ、かけた時間を測定することにより、バランス能力の加齢変化を検討したい。 また、反応時間測定実験は、視覚からの刺激と体性感覚器からの刺激を開始時間とするブレーキング動作に要する反応時間を測定し、その加齢変化を検討したいと考えている。
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