研究期間の総まとめとして、関連する学会(人類働態学会)のシンポジウムにてシンポジスとして参加するとともにこれまでのデータをもとにした論文を作成し公表した。 シンポジウムでは、自転車事故削減をめざす他の分野の研究者と共同で、各分野からみた課題とそれらに対する改善提案についてプレゼンするとともに残されている課題の整理をし次に取り組むべき方向を示した。 公表論文の概要は次のとおりである。近年における自転車利用者の事故要因を明らかにするために、高齢者および若者(大学生)が自転車乗車中、どの点に注意が向けられるかについて解析した。被験者は高齢者11名と若者(大学生)23名であり、被験者にアイカメラを装着させ幹線道路と生活道路を自転車で走行させた際、注視した場所はどこか、またその頻度はどの程度かという観点から解析された。特に、自転車の安全確保と関係深いと考えられる9つの注視先についてカウントされた。具体的には、路傍に存在する家屋の玄関およびドア、駐車場、信号、路地との交差点、他の自転車、歩行者、標識や路上のペイント、学校や周囲の建物、その他(空き地や空)、である。 詳細に分析した結果、両グループとも多くの者は自転車走行中のわき見運転をしていないことが分かった。しかし、ほとんどの高齢者は幹線道路および路地との交差点で常に自分の安全を確認する一方で、多くの若者は安全確認を怠っていることが明らかになった。これらの結果は、交差点、特に路地との接合部において、若者は自転車乗用中に事故を引き起こし高齢者が被害者となるという従来の調査結果と深く関連することを示唆している。
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