研究概要 |
1.危険予測場面を適切に配置した広角運転映像の作成 ヒトの運転視野に近い160度程度の広角映像の作成を試みた.しかし,映像作成の専門技術者と試行錯誤した結果,複数カメラを車載して撮影した運転映像の合成は,車の左右の揺れの違いなどから,ズレ補正が困難であることが判明した.そこで,視野角140度程度の広角レンズを用いて映像を作成した.しかし,広角レンズで撮影した映像では,左右端が若干拡がり前方の対象物が遠くに見えるという歪みが生じ,実際の運転とは速度感・距離感が異なり,視覚的な疲労感を生じやすいことがわかった.このため視野測定等には広角映像の使用が有効と思われるが,模擬運転時の映像として用いる場合には,従来の運転映像をワイドTV画面(約110度)で提示するのが実際的と思われた. 2.模擬運転装置の再構築 発汗計,皮膚電位計,ADコンバータ,車載用操作デバイス(ハンドル・アクセル・ブレーキ)等を一体化した模擬運転装置を再構築した.映像提示装置は新たに27インチTVモニターを採用し,映像と同期させて測定データを記録する専用ソフトを作成した(西澤電機計器製).これによりハンドルは可動域が最大360°から720°へ,反力は1Nから最大25.2Nへ,ブレーキ反力は最大12Nから24Nへ,アクセル反力は最大9Nから14Nへと実車レベルに改善した. 3.従来装置とのデータ比較 健常成人10名を対象に従来装置との比較実験を行った.映像のシナリオに応じた手掌部発汗反応と皮膚電位反射の大小関係には従来装置と本装置で大きな差はなかった.デバイス操作については,従来装置ではハンドル・アクセル・ブレーキの可動域と反力が小さく,天井効果から正確な測定ができない被験者もみられたが,本装置では実車に近い可動域と反力が得られたため,デバイス操作の量をより正確に測定できることが確認された.
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今後の研究の推進方策 |
本装置による模擬運転と実際の自動車運転にて,ドライバーの視線動作,手掌部発汗反応,皮膚電位反射,脳波変動等を比較検討し,本装置の特性(利点と限界)を明らかにするための実験を行う. 模擬運転による生体反応の評価に視線動作の解析を加え,危険認知のプロセス:視線動作(視覚的認知)→デバイス操作(ハンドル・アクセル・ブレーキ)→皮膚電位反射→手掌部発汗の生じる順序性(応答潜時)を検証するための実験を行う.
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