研究概要 |
新たに構築した自動車運転認知行動評価装置と映像を用いて実験を行い以下の研究成果を得た. 1.模擬運転による手掌部発汗反応は実車運転時の反応を反映する: 健常成人7名を対象に実車運転と模擬運転の手掌部発汗反応の相関を調べた.実車運転では発汗量が多い傾向がみられ,危険予測場面では両反応は時相のズレをもって高い相関(r=0.8-0.9)を示した.実車運転・模擬運転ともに交差点では直進に比べて反応が多く,危険認知の差によると解された.模擬運転時の発汗反応は実車運転時の反応を反映し,危険認知・予測機能の評価に有効と思われた. 2.模擬運転映像の危険な場面では脳波変動(β波の増加)がみられる: 健常成人3名に運転映像を提示し脳波(Fz,Cz,Pz)を計測した.ボール飛び出し,人飛び出し,一時停止,対向車進入等シナリオの前後でα波とβ波の割合を比較すると, 全例で一時停止を除き正中前頭部Fzにβ波の増加を認めた.ボール飛び出し場面では,脳波変動に続いてSPRが現れ,脳内活動に対応する皮膚交感神経活動の興奮が確認された. 3.視覚的認知によってデバイス操作・皮膚電位反射・手掌部発汗反応が生じる: 健常成人18名にアイマークレコーダを装着して模擬運転を行わせた.ボール飛び出し場面では,ボールへの視線移動,デバイス操作,SPR,手掌部発汗の順に反応が生じ,潜時(sec.)は視線動作0.46,ハンドル0.94,アクセル1.53,ブレーキ1.75,SPR 2.36,手掌部発汗3.44であった.小路走行や停止ではデバイス操作とSPR・発汗反応のタイミングは個人差があり,応答の順序も一律でなかった.発汗量(mg/min)は,ボール飛び出し0.35,小路走行0.25,一時停止0.22であった(p<0.000).視線停留点の少ない群は,多い群より発汗量が多く(p<0.01),注意機能の強さが影響したと思われた.
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