これまでの研究成果を基に,危険認知(予測)の評価に適したシーンとして,「前方からランナーが走ってくる」,「対向車とのすれ違い」,「自転車追い越し」,「ボール飛び出し」,「前方に歩行者が飛び出す」,「交差点の右折」を抽出し,高齢ドライバー(n = 52)の手掌部発汗,皮膚電位反射(SPR),ブレーキ操作の反応量と,SPRとブレーキ操作の応答潜時を求めた.また,MMSEで認知機能の低下が認められた2名の応答特性を検討した.認知機能が正常であった50名の応答からは次の①~④が明らかとなり,これらを模擬運転テストの判定プロトコルの基本軸にすることが妥当と判断した.①「ボール飛び出し」シーンではSPRとブレーキの応答潜時が最も短く,危険認知による応答速度を評価するのに適す.②「前方からランナーが走ってくる」「前方に歩行者が飛び出す」シーンではブレーキの応答潜時に個人差が生じやすく,危険認知に対する個人の対処行動の評価に適す.③「対向車とのすれ違い」「自転車追い越し」シーンではアクセルとブレーキの踏み替えに個人差が表れやすく,危険予測に対する個人の対処行動の評価に適す.④「交差点の右折」シーンはSPRの応答潜時が年齢およびTMT(注意と視覚探索)の成績と相関があり,注意機能の評価に適す.なお,MMSEで認知機能低下と判定された2名はTMTの成績も低く,アクセルとブレーキの誤操作,危険認知による応答の遅れ,危険なシーンの見落としなどがみられることを確認した. 今後計画する研究では,これまでの研究成果を基に,とくに個人差が表れやすい危険予測場面の手掌部発汗とSPRおよび前頭前野の脳血流反応の関連性を再度精査し,模擬運転テストの判定プロトコルをより妥当性の高いものにしたいと考えている.
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