研究概要 |
本研究の目的は,青少年における健康の社会的決定要因として,ソーシャル・キャピタル(以下SC)が有用なのかというリサーチクエスチョンに応えることである。初年度である本年度は,青少年の自己評定によるSC測定尺度を作成し精神測定学的検討を行った。青少年のSCと健康に関する先行研究についてのレビューから,青少年のSC指標として,内容的に適切と考えられる学校および近隣における認知的SCと構造的SCを抽出し予備調査票を作成した。研究代表・分担者の研究フィールドから,沖縄の高校2校,茨城の高校2校,佐賀の高校2校を選出して計37学級に在籍する生徒1362名を便宜的標本として,無記名自記式の質問紙調査を行った。安定性を検討するために,協力校1校の生徒118名を再テストの対象とし,個人を同定できない方法を用いて2週間間隔で追跡調査した。 因子分析の結果,学校および近隣の2つの認知的SCに大きく分かれ,さらに,学校の認知的SCは生徒間および先生に対する認知的SCに分かれることが確認できた。構造的SC項目を含めた全体的SC概念についての構造方程式モデルはかなり高い適合度を示し,青少年のSCは学校および近隣の認知的SCと学校および近隣の構造的SCから構成されることが示唆された。各尺度のα係数と再テスト信頼性係数は十分な内的整合性と安定性を示した。SCの中間変数と考えられる学校や近隣の安全性とSCとの間に,また,健康指標とSCとの間に予期された方向の関連性が認められ,基準関連妥当性が確認された。集団レベルのSCの構成概念妥当性を級内相関を用いて検討したところ,SCは学級集団で類似していることが確認された。 以上のように,本研究で作成したSC尺度は適当な妥当性と信頼性を有することから,青少年のSCと健康に関する研究に使用可能なことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,当初の研究計画通り,3地域におけるサンプリング調査を実施して,青少年のソーシャル・キャピタルと健康指標との関連性について,個人レベルと集団レベルの両方を考慮した分析を用いて明らかにする予定である。
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