本研究の目的は,青少年における健康の社会的決定要因として,ソーシャル・キャピタルが有用なのかというリサーチクエスチョンに応えることである。 平成26年度は,これまでに沖縄と本土の高校生を対象にサンプリング調査を実施して得たデータをもとに,ソーシャル・キャピタルレベルおよびソーシャル・キャピタルと健康指標との関連性について地域比較を目論んだデータ解析を実施した。具体的には,対象地域として,沖縄,佐賀,茨城の3県を選定し,それぞれの高校生について,平成23年度に作成した青少年のソーシャル・キャピタル尺度を用いて測定した個人レベルの学校・近隣ソーシャル・キャピタルと主観的健康との関連性を県別に比較検討した。 結果として,主観的健康は沖縄が高く,学校認知的ソーシャル・キャピタルは沖縄,茨城,佐賀の順で高く,近隣認知的ソーシャル・キャピタルは佐賀が高く,学校構造的ソーシャル・キャピタルは沖縄が低く,近隣構造的ソーシャル・キャピタルには地域差が認められなかった。重回帰分析の結果,決定係数が低いという限界があるが,3県とも主観的健康は,構造的ソーシャル・キャピタルよりも認知的ソーシャル・キャピタルに規定されており,その中でも学校における認知的ソーシャル・キャピタルの規定力が強いことが示された。本知見は構造的ソーシャル・キャピタルよりも認知的ソーシャル・キャピタルの健康影響が一貫して示されてきた国内外の先行研究を支持するものであった。 結論として,個人レベルのソーシャル・キャピタルレベルの高低に地域差がみられたものの,地域に関係なく,高校生の健康に対して学校および近隣の認知的ソーシャル・キャピタルは重要な役割を果たすものと思われる。主たる研究業績として,2014 EWC/EWCA International Conferenceにて招待パネリストとして,これまでに得た知見を発表した。
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