研究課題/領域番号 |
23300247
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
酒谷 薫 日本大学, 医学部, 教授 (90244350)
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研究分担者 |
辻井 岳雄 日本大学, 医学部, 研究員 (80424216)
小林 寛道 日本大学, 国際関係学部, 教授 (60023628)
岡本 雅子 帯広畜産大学, 動物・食品衛生研究センター, 准教授 (00391201)
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キーワード | 運動 / 脳機能 / ストレス / 近赤外分光法 / 生涯発達研究 |
研究概要 |
運動療法によるストレス緩和効果の神経基盤に関して以下の点を明らかにした。 1)NIRSを用いたストレス評価法の確立:ストレスに対する前頭前野の中枢反応、自律神経反応、心理テスト(STAI,POMS等)を包括化したストレス評価法を開発した。NIRSは2チャンネルNIRSを用い、PCにて自動的に認知課題を与え、課題成績と脳機能が同時測定できる。本装置を用いて咬合不全によるストレス反応を測定した(ISOTT2011発表)。スプリントを用いて人工的に咬合不全を起こすと、前頭前野の活動(酸素化Hb濃度変化)及び心拍数は徐々に上昇し、STAIスコアも上昇傾向を認めた。ワーキングメモリー課題の反応時間は咬合不全により上昇し、課題遂行中の前頭前野の活動は咬合不全により低下した。 2)運動のストレス緩和効果:健常高齢者(平均65.9歳)を対象に軽度運動負荷(40% of VO2max)の影響を検討した(ISOTT2011発表)。エルゴメータにより10分間の負荷を与えると、STAIスコア及び唾液中のコーチゾール濃度が減少した。ワーキングメモリー課題の反応時間は運動負荷により低下し、課題遂行中の前頭前野の活動の程度は運動により上昇した。軽い運動を行うことにより高齢者のストレスが緩和され、ワーキングメモリーが向上することが示された。さらに、運動療法が中年女性(47.1歳)の抑うつに効果があるのか検討した。運動により状態不安(STAI)、及び緊張-不安、疲労、抑うつ、混乱(POMS)の低下を認め、唾液中コルチゾールは低下傾向を示した。一方、前頭前野の酸素化Hb濃度は増加した。 本年度の研究により、(1)本装置により簡便かつ定量的にストレス反応と高次認知機能を評価できることが示された。(2)運動療法によるストレス緩和効果及び高次認知機能向上効果は幅広い年齢層で認められる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とした「NIRSを用いたストレス評価システム」を開発し、本システムにより簡便かつ定量的にストレス反応と認知機能が評価できることを実証した。また、本システムを用いて中高齢者における運動療法の効果(急性)について検討し、軽い運動にはストレス緩和効果と高次認知機能向上効果があることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
被験者には中高齢者のみならず小児も含めた幅広い年齢層を対象とすることにより、運動のストレス効果に関する生涯発達研究を行う。高齢者と小児の研究においては、ストレス反応だけでなく、作動記憶など様々な高次認知機能についても測定を行い、小児においては学習能力を高めるための運動プログラムの開発、高齢者においては認知症の改善に寄与するための運動プログラムの開発に結びつく研究を行う。このため、運動の急性効果のみならず長期的効果についても検討する。
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