研究概要 |
1)抑うつ傾向を示す中年女性に対する運動のストレス緩和効果:うつ傾向を示す中年女性に対して軽度運動(VO2max50%、10分)を負荷し、心理テスト(STAI、POMS)及び唾液中コルチゾールの変化を測定した [1]。前頭前野の脳血流変化をNIRSで計測した。運動により状態不安 (STAI)、緊張-不安 (POMS)、抑うつ落込み (POMS)、疲労 (POMS)、混乱 (POMS)の低下を認めた。唾液中コルチゾールは低下傾向を示した。前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度は増加した。軽度運動は前頭前野を活性化し、ストレス緩和効果がある可能性が示唆された。 2)前頭前野の安静時神経活動の左右偏倚性によるストレス評価法の開発:平成24年度に機械学習を用いて安静時NIRS信号よりストレス状態を予測する方法を開発したが、神経生理学的メカニズムは不明な点が多かった。平成25年度には、安静時の前頭前野神経活動の左右偏倚性より不安心理状態を推定する方法を考案した [2]。本法は、安静時(3分間)の左右前頭前野のΔ酸素化Hb(ゆらぎの振幅変化)を積分し、左右偏倚指数(LIR=([右Δ酸素化Hb]―[左Δ酸素化Hb])÷([右Δ酸素化Hb]+[左Δ酸素化Hb]);プラス値は右優位、マイナス値は左優位を示す)を求めるものである。LIRは、State Trait Anxiety Index(STAI)-1(状態不安)と正の相関関係を認め、右優位はネガティブ、左優位はポジティブな感情を示す”Valence asymmetry hypothesis”と一致しており、運動療法だけでなく様々なリラクゼーション効果を検討するには有用と考えられた。 [1]自律神経 50 号:219-223(2013) [2] Journal of Biomedical Optics 19(2), 027005 (2014)
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