研究課題/領域番号 |
23300248
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森下 伸也 関西大学, 人間健康学部, 教授 (70174414)
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研究分担者 |
森田 亜矢子 関西大学, 人間健康学部, 助教 (70551315)
広崎 真弓 関西大学, 人間健康学部, 助教 (70586304)
松阪 崇久 関西大学, 人間健康学部, 助教 (90444992)
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キーワード | 笑い / 健康 / 横隔膜 / 生体信号 / 筋電図 / 客観的指標 / 笑い測定システム / 笑いの計測 |
研究概要 |
本研究では、横隔膜近傍で取得される筋電信号を用いて笑いを高精度に認識し定量化するアルゴリズムを構築し、さらに、それを応用健康科学領域で活用することをめざしている。平成23年度は、笑い測定の基礎的実験や先行研究の収集・整理を通して、腹部で検出される筋電波形の解析手法と定量化手法の検討をおこなった。とくに、以下の3点を検討した。 (1)生体信号処理分野における先行研究の収集・整理をおこないながら、横隔膜近傍の筋電位の波形データから笑い特有の波形のみをより高精度に認識するためのアルゴリズムを検討した。笑いや咳など、横隔膜反応を伴う動作の筋電信号には周波数特性に共通点が見られたため、笑い特有の一連の波形発生のタイミングという時間軸を加味した解析アルゴリズムが必要であることがわかった。 (2)横隔膜近傍で取得される筋電波形の振幅は、被験者の体脂肪率の影響を受けることがわかった。 体脂肪率と波形の振幅の分析から、身体的差異に起因する波形の個体差を標準化する手がかりを得た。 (3)横隔膜近傍と腹筋部位における笑い発生時の皮膚表面筋電位データの比較をおこなった。両条件での筋電データには類似性が見られたが、波形の振幅は横隔膜近傍での方が大きかった。笑いの筋電波形データの取得には、横隔膜近傍がより適していることがわかった。 以上の成果をまとめ、「横隔膜式笑い測定システム」の今後の検討課題についても考察した論文を板村英典・池田資尚・池信敬子・森下伸也の共著で執筆し、「筋電計を用いた『笑い』の分類と定量化システムの検討-『横隔膜式笑い測定システム』の展望と課題」(『人間健康学研究』第4号、2012年3月)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度には、笑いの筋電波形による笑いの定量化には横隔膜近傍での測定が有効であることをはっきりさせることができた。しかし、本年度は筋電位の波形データから笑いの反応のみを高精度に認識するためのアルゴリズムの模索に重点をおいて分析を進めたため、当初計画していた多量のサンプル収集をおこなうには至らなかった。今後、データ収集と解析をさらに進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に知見として得られた笑いの高精度認識・定量的算出を可能とする波形解析アルゴリズムを、ソフトウェア・プログラムに反映させて、それを用いたデータ収集と解析をおこなっていく。本研究で主な分析対象とする「自然発生的な笑い」は被験者が意識的に発生させることのできない種類のものであるため、限られた実験時間内でその筋電波形を多量に収集することはなかなか困難なことである。そこで今後、この種の自然発生的な笑いの筋電データをより効率的に収集するために、実験環境の改善および実験方法の改良についても検討していく。
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