研究課題/領域番号 |
23300249
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研究機関 | 公益財団法人国際科学振興財団 |
研究代表者 |
村上 和雄 公益財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 所長 (70110517)
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研究分担者 |
堀 美代 公益財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 専任研究員 (90399329)
坂本 成子 公益財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 専任研究員 (60419869)
大西 英理子 公益財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 専任研究員 (90396284)
大西 淳之 東京家政大学, 家政学部, 准教授 (40261276)
鮎澤 聡 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (20400682)
松下 明 筑波大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80532481)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 笑い / ストレス / fMRI / SOC / functional connectivity |
研究概要 |
ストレスは「抑うつ」、「適応障害」、「生活習慣病」などの様々な疾患の原因となっている。一方、「笑い」が心身の生体機能を適正化し、健康にプラスになると論じられているが、どのようなタイプの「笑い」がストレスの軽減効果を有しているかいまだ解明されていない。我々はこれまで健康やストレスとの関連において「笑い」の心身に対する影響を様々な角度から検討してきたところ、「笑い」が、2型糖尿病患者の食後血糖値の上昇を著しく抑制し、その際に末梢血白血球で発現変動する遺伝子の発現が調節されることを明らかにした。本研究では短時間で「ストレス」からの脱却を可能にするような効果的な「笑い」とはどのようなタイプの「笑い」なのかを個人の資質に照らし合わせて明らかにすることを目的とする。そのために、多面的な「ストレス」情報を正確かつ容易に測定できる技術を確立する。それと同時に、「笑い」という主観的な感受性や個人的な嗜好性と関連する分子・神経メカニズムを解明する。 24年度は、23年度に引き続き「笑い」の神経基盤の解明や、ストレス対処能力に関わる脳部位の特定を目指した。具体的には、個人の資質の相違が反映される脳領域や活動パターンの違いをfMRIと、健康生成論の考えに基づくストレス対処力の指標である「SOC (Sense of Coherence)」レベルとの相関により検討した。健常な大学生82名(男43名、女39名)を対象に、定常状態時(5分間)におけるfMRIの測定を行い、SOCスコアの程度により群分けて解析し、ストレス対処能力に特異的な脳部位を見出した。また、この結果をもとに、ストレスに対する感受性と関連すると予想される脳の領域間の関係(functional connectivity)を現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は「笑いやすさ」の神経基盤解明のための予備実験および本実験を行った。24年度は、本実験で実施したSOC、多元的共感尺度、気分尺度(POMS(Profile of Mood States)、DAMS(Depression and Anxiety Mood Scale)によるアンケート調査のデータの相関解析を行い、本実験に有用な心理指標を抽出した。また、定常状態の神経基盤も解明のために、fMRIデータも数種類の解析法を実施し、より適切な解析法が特定できた。これらの解析データをもとに、多方面の研究分野の専門家である分担者で、丁寧に多面的解析を行い、研究目的の遂行に力を注ぐことにより、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は24年度に引き続き、「笑いを誘発する」動画映像の視聴時(5分間)と、対照として「風景」映像の視聴時(5分間)のfMRIの測定結果を解析し、「笑い」と相関する脳部位を特定する。更に、ストレス対処力(SOC)の程度により群分けて解析し、個人の資質と「笑い」の相違が反映される脳領域や活動パターンの違いを解析する。さらに、これまでの研究結果を統合し、「笑い」の客観的評価系の確立、およびストレス評価系の確立を目指す。 最終的には、その評価系を用いて2型糖尿病患者に「笑いを誘発する」動画映像(5分間)と、対照として「風景」映像(5分間)を視聴してもらい、「笑いを誘発する」動画による血糖値抑制効果および末梢白血球遺伝子の発現変動を検証し、「笑い」によって引き起こされる血糖値抑制に関わる分子や神経基盤の解明を目指す。
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