研究課題/領域番号 |
23300253
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森谷 敏夫 京都大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (90175638)
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研究分担者 |
林 達也 京都大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (00314211)
坂根 直樹 京都大学, 京都医療センター・医療研究センター・予防医学研究室, 室長 (40335443)
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キーワード | 加齢性筋肉減少症 / 骨格筋電気刺激 / 運動療法 / エネルギー代謝 / 脳由来神経栄養因子 |
研究概要 |
本研究は、骨格筋への機能的電気刺激により、加齢性筋肉減少症(サルコペニア)の予防・改善効果を享受できるか否かを検証するものである。本年度は健常男子学生を対象に基礎研究として従来型のスパッツ電極と新たに開発したベルト型電極を用いた筋電気刺激方法の比較検討を行った。従来型の電気刺激法では、各筋群に2個の電極を装着する必要があり、左右の下半身を効果的に刺激するためには20個の電極と10チャンネルの刺激装置が必要であった。更にこれらの電極を装着したスパッツ型電極では下着や失禁対策のパンツ等を脱いで、刺激電極スパッツを装着する必要があり、高齢者への応用が難しいのが現状である。そこで我々は左右の大腿下部、下腿下部及び腹部に1周するベルト型シリコン電極を開発し(国際特許申請中:国際出願番号PCT/JP2012/001129)、失禁用パンツや下着等の脱着無しで実施できる筋電気刺激法を開発した。そこで、この新型のベルト型筋刺激装置の有効性を従来型刺激装置と比較検討するために8名の男子学生を対象に、筋肥大モード、エネルギー代謝促進モードで筋電気刺激が血圧、心電図、血中乳酸、脳由来神経栄養因子(BDNF)、エネルギー代謝などへの効果を詳細に検討した。その結果、20分間の4Hzの代謝促進モードでは従来型と比較して酸素摂取量が平均で24.7ml/kg/分(約7METs)と有意に増加した。これは軽いジョギングに相当する強度である。また刺激周波数20Hz、刺激時間5秒ON,2秒OFFでの20分間の筋肥大モードでの比較検討の結果、新型装置により血中乳酸が平均で5.13mMと有意に増加したことや呼気ガス分析により有意に呼吸商が高かったことなどから、選択的に速筋線維が動員されたことが示唆された。また、筋電気刺激により運動誘発性の脳由来神経栄養因子や他の筋由来の生理活性物質の増加が惹起できるのか否かを検証するための基礎実験も行い、解析手法もほぼ確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベルト型電極を採用した筋電気刺激装置の開発、検証等に予想以上に時間を費やしたが、おおむね当初に計画していた実験は終えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は慢性的な運動不足の中高齢者30名程度を対象に、20分前後の骨格筋電気刺激を両側下肢筋群(大腿四頭筋、ハムストリングス、大啓筋)に8週間実施し、その前後で形態学的項目(体組成、筋横断面積)、臨床評価的項目(採血、歩行速度、筋力)及び脳由来神経栄養因子(BDNF)などの改善効果を検証する
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