研究課題/領域番号 |
23300253
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森谷 敏夫 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (90175638)
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研究分担者 |
林 達也 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (00314211)
坂根 直樹 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (40335443)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 筋電気刺激 / 筋肥大 / 高齢者 |
研究概要 |
本研究は、骨格筋への機能的電気刺激により、加齢性筋肉減少症(サルコペニア)の予防・改善効果を享受できるか否かを検証するものである。また、骨格筋の機能的電気刺激による筋由来生理活性物質や免疫、脳由来神経栄養因子に対する基礎研究や中・後期高齢者の運動療法の開発への応用は、寝たきり患者や骨粗しょう症、腰痛や膝痛など整形外科的疾患をもつ「運動弱者」への他動的運動処方をも可能にする期待が持てる。また、血栓防止効果を狙ったダイナミックな筋電気刺激による静脈還流の促進も可能になるかを実験的に検証する。 今年度は、平成23年度で得られた基礎研究結果を踏まえ、慢性的な運動不足の中高齢者28名を対象に骨格筋電気刺激を検証済みの新型刺激装置と刺激電極を用い、腹部、臀部、両側下肢筋群(腹筋、大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、前頚骨筋、下腿三頭筋)に1回20分、週2回、12週間実施し、その前後で形態学的項目、歩行速度、自律神経活動動態などの改善効果を検証した。また、健常男子学生8名を被験者にして骨格筋電気刺激により脳由来神経栄養因子やインスリン様成長因子(IGF-1),体内麻薬とも呼ばれるβエンドルフィン分泌などが惹起され得るのかの基礎実験も併せて行った。その結果、中高齢者の体脂肪の有意な減少と除脂肪体重、筋量の有意な増加が認められた。また、顕著な歩行速度の増加も認められた。一方、心拍変動パワースペクトル解析による安静時心拍数や自律神経活動動態には有意な変化は認められなかった。 男子学生を対象にした基礎実験では、週3回、1回20分、4週間の骨格筋電気刺激により中間広筋を除く全ての筋の筋厚及び大腿・下腿の推定断面積、等尺性膝伸展筋力が介入後有意に増加した。また、筋電気刺激後に成長ホルモン、βエンドルフィンの有意な増加をみとめたが、IGF-1には顕著な変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中高齢者も予定いた30名近い人数を集めて実験が行えたことと、健常男子学生を対象にした基礎実験も概ね当初の予定通りの実験を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は中・後期高齢者40名程度を対象に、基礎研究で明らかになった最適筋刺激パターン(筋トレ(肥大)モード、2)血流促進モード、3)エネルギー代謝促進モード)を複合的に用い、骨格筋電気刺激と栄養介入の相互作用の効果を総合的に検討し、介護予防や高齢者のQOL改善のための実験検証を行う。尚、栄養介入に用いる中高 齢者用の補助食品はネスレ研究所(ジュネーブ、スイス)から提供を受けることが決まっている。被験者を3群(コントロール群、電気刺激群、電気刺激+栄養補助食品)に分け、自律神経活動動態、脳由来神経栄養因子(BDNF)、βエンドルフィン、インスリン様成長因子(IGF-1)、認知機能などへの効果を総合的に検討し、介護予防や高齢者のQOL改善のための実験検証を目指す。介入群の被験者には、最適筋刺激パターンでの30分間の電気刺激を週に3回、3ヶ月間介入し、電気刺激群と電気刺激+栄養補 助食品群における筋力・筋横断面積の変化を超音波画像法を用いて詳細に比較検討する。これらの結果を統計処理して比較検討し、学術雑誌への論文投稿及び最終報告書を作成する。
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