研究概要 |
本研究は、骨格筋への機能的電気刺激により、加齢性筋肉減少症(サルコペニア)の予防・改善効果を享受できるか否かを検証するものである。また、骨格筋の機能的電気刺激による筋由来生理活性物質や免疫、脳由来神経栄養因子(BDNF)に対する基礎研究や中・後期高齢者の運動療法の開発への応用は、寝たきり患者や骨粗しょう症、腰痛や膝痛など整形外科的疾患をもつ「運動弱者」への他動的運動処方をも可能にする期待が持てる。今後益々進む高齢化社会や超運動不足に起因するサルコペニアやその他の生活習慣病の新たなる予防、改善、治療の観点からも本研究がもたらす社会的意義や医療経済に及ぼす影響は多大である。 今年度は中・後期高齢者(要支援、要介護1,2)41名を対象に、骨格筋電気刺激と栄養介入の相互作用の効果を総合的に検討し、介護予防や高齢者のQOL改善のための実験検証を行なった。被験者を3群(コントロール群、電気刺激群、電気刺激+栄養補助食品)に分け、自律神経活動動態、膝伸展筋力、歩行速度、超音波測定による大腿四頭筋、下腿三頭筋の筋横断面積を最適筋刺激パターンでの30分間、週に2回、3ヶ月間介入し、比較検討した。その結果、電気刺激+栄養補助食品(ホエイタンパク、ルチン、ω3系脂肪酸、クルクミン)介入群では筋横断面積及び膝伸展筋力の有意な増加が認められた。自律神経活動及び歩行速度では群間で有意差は認められなかった。さらに,中高齢者23名を対象に3ヶ月間の筋電気刺激が記憶や認知機能に重要な働きを持つ脳由来神経栄養因子(BDNF)に及ぼす影響を検討した結果、電気刺激介入群では加齢に伴うBDNFの漸増的減少を有意に緩和させることが明らかとなった。
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