研究概要 |
65歳以上の高齢者の約30%は1年間に1回以上転倒することが報告されており、その社会的影響は非常に大きい。高齢者の転倒要因は非常に多岐にわたるが、中でも身体機能低下の寄与率は大きい。我々はこれまでの調査によって、比較的元気な方(日常生活で歩行補助具が必要とならない程度)であれば二重課題(DT)処理能力の低下が、比較的虚弱な方(日常生活で何らかの歩行補助具が必要となる程度)になると筋力低下が主要な転倒要因となることを明らかにした。本研究の目的は、身体機能レベル別にトレーニング内容を変更し、対象となる集団の機能特性に応じた介入を検証することである。 Timed up & go testの遂行時間によって、高齢者を2つのグループ(robust, frail)に分類した。RobustグループではDTトレーニング群、筋力トレーニング群、コントロール群の3群を作成し、frailグループでは筋力トレーニング群とコントロール群の2群を作成した。3ヶ月間の介入および観察と、その後1年間における転倒追跡を完遂した高齢者は1,190名(75.2±7.1歳)であった。結果、robustグループのDTトレーニング群の転倒発生率は12.6%、筋力トレーニング群は28.0%、それにコントロール群は23.2%であった(P<0.05)。frailグループにおける筋力トレーニング群は39.5%、コントロール群は51.1%であった(P<0.05)。つまり、転倒予防を目的とする場合には、robustな集団にはDTトレーニングを、frailな集団では筋力トレーニングが必要であると言える。
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