研究概要 |
本年度は、1)運動処方として推奨されている歩行運動における下肢筋群の活動水準、2)歩行速度と下肢筋群の活動水準との関係、および3)スクワット動作における乳酸性作業域値について検討した。課題1)においては、歩行による運動処方条件として推奨されている歩行速度を基準に3種類の歩行速度(3 km/h, 4 km/h, 5 km/h)を設定し、各速度条件において30分間の歩行を実施した際の下肢筋群の筋活動水準を定量した。その結果、各条件での筋活動水準(%EMGmax)は、膝関節伸展筋群の場合に5.2~11.7%であり、足関節底屈筋群では26.1~36.6%であった。これらの結果と日常生活動作中の各筋群の活動水準から、運動処方として推奨される歩行運動の内容では、たとえ時間を延長しても、下肢筋群、特に大腿四頭筋群に対しては筋機能を改善しうる強度とはならないことが示唆された。課題2)では、課題1)の結果を受けて、歩行速度を上げることにより、下肢筋群の筋量・筋力を改善することが可能であるかどうかを検討するために、歩行速度と下肢筋群の活動水準との関係を検討した。その結果、膝関節伸展筋群の活動水準は、最大歩行速度時においても、筋力の増加に必要と考えられる40%MVC以上のものとはならなかったが、下腿筋群の活動水準は、最大歩行速度の57%に相当する速度において40%MVCに匹敵する活動水準が得られ、その運動時の主観的強度として、“楽である”と“ややきつい”の間である“12”という値が求められた。課題3)では、スクワット動作における乳酸性作業域値(LT)の発現する運動強度および自重負荷スクワットでの回数について検討した。その結果、外的負荷を用いたスクワットにおいては最大挙上重量の約25%に相当する重量での動作において、自重負荷スクワットでは40-60回(3秒に1回)の反復時において、それぞれLTが発現することが明らかとなった。
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