研究課題/領域番号 |
23300262
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
上村 協子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (00343525)
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研究分担者 |
藤野 次雄 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (10117757)
江原 絢子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 客員教授 (40256285)
萩原 なつ子 立教大学, 社会学部, 教授 (50279717)
清水 理子 (片平 理子) 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 准教授 (70204427)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 消費者教育 / 消費者教育推進法 / 地産地消 / アクティブ・ラーニング / 消費者市民社会 / 生活者・プロシューマー / 持続可能性 / グローカル |
研究概要 |
「消費者教育の推進に関する法律」(平成24年12月13日施行)により消費者市民社会の概念が示され自治体に地域協議会設置の努力義務が課せられた。本研究と推進法は、日本の消費者教育がパラダイムを転換し持続可能な消費を目指す変革期を迎えているとの認識している点で共通する。行政の動向を踏まえつつ、天野正子の現代生活者論にもとずき最終消費を生命生活の再生産であるとの捉える論説を整理した。生活文化ESCの5つの試行事例(①セミナー②食文化③調理実習④プロシューマー教育⑤金融経済教育)を継続実施した。また御船美智子の家事労働と消費に関する概念について図式化した。 事例1)セミナー実施:セミナーが学生の行動にあたえる影響を観察するため、食品ロス削減と社会福祉政策を結びつけるフードバンクの活動や被災地での生活復興支援活動に取り組む団体によるセミナーを実施した。 事例2)食文化教育:食育・環境教育に地域の生活文化の視点を加えて総合的な視野から活動を再検討し、中学校で行ったアンケート結果から授業の有効性を検証した。 事例3)調理実習:片平は御船美智子が、消費生活を、①選択②購買③転化④最終消費⑤処理⑥廃棄リサイクルの6段階に分けたなかでの③転化に注目して「消費と生活文化」の関係について検討する。生活文化は転化の段階で使われる知識や技術やその底流に存在する価値観ととらえる可能性を示した。 事例4)プロシューマー教育:大学教育でキャリア教育と重ねながら能動的・主体的な学び(アクティブ・ラーニング)として消費者教育を捉えることでその意義と効果測定の方法が明確となる可能性を示唆した。 事例5)金融経済教育:OECDが2008年5月に組成した「金融教育に関する国際ネットワーク会議(INFE)」などにも注目しつつ台湾との国際比較アンケートを実施した。平成23年度、24年度の報告書を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活文化ESCでは大学生に対する取り組みを試行的に実施している。消費者教育推進法の施行により、国内における持続可能な消費に関する教育活動は活性化している。また金融経済教育に関する国内外でのネットワーク化の動きも加速している。 消費生活や消費者教育が活発になる国内外での経済社会状況を研究の背景として把握しつつ、生活文化ESCに関する概念整理と5つの事例研究を継続し、報告書を作成して研究成果に関して情報共有し共通の認識を形成しつつある。 また平成24年12月に実施された研修成果である「消費者教育の担い手となる家庭科教員の育成」の成果も提供を受ける予定である。 現在の懸案事項は、アンケート調査の実施である。金融教育の中国でのアンケート調査が、中国の対日感情から遅れた点と、セミナー実施後、コア学生に対する効果測定の方法としてアンケートを行う予定であったが、大学教育でのポートフォリオを活用した授業効果測定と重なる部分があり調整が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度・平成24年度に実施した食文化と金融経済教育を柱として分析しつつ、平成25年度も①セミナー②食文化③調理実習④プロシューマー教育⑤金融経済教育の5つの試行事例を継続していく。 試行事例の領域は、食から金融までは幅広く、また対象も地域密着から国際比較まで多彩であり、体系的に整理するにあたっては核となるものが必要である。平成25年度は学生を主体とした「アクティブ・ラーニング」を核にして学生の変化を把握する予定である。 また、調査実施にあたってはアンケート調査による量的な変化のみならず、学生が生活文化ESCにより、持続可能性をグローバルな視点とローカルな視点を兼ね備えたグローカルな消費者市民としての認識をもって、自らのライフスタイルを変革しようと動機づけする質的変化に注目し、成果として分析できるように調査を設計する。
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