研究課題/領域番号 |
23300263
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
甲 洋介 法政大学, 国際文化学部, 教授 (70343613)
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キーワード | 生活世界 / 家族研究 / 質的研究 / コミュニケーション支援 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、何らかの事情により離れて暮らさざるを得ない家族を支援する新しいコミュニケーション方式と、それを家族の日常生活に無理なく埋め込む方法、を構築することである。離別して年月が経過した家族の生活世界は均質でないのが一般的であり、情報コミュニケーション方式を設計するにあたっては、離れた家族の生活世界の自然的な非対称性を考慮する必要がある。 本研究に取り組むにあっては、同居する家族が他の家族成員の気分や気配を感じとる際の手掛かりとなる感覚情報"peripheral communication cues"に注目し、これを家族のつながり感の形成に寄与するものとして活用するアプローチを採用する計画である。具体的には、家族にとって特別な意味を持つ生活風景・人物・習慣・モノ・出来事など、家族の「愛着」の対象を明らかにし、それを複合的な多感覚情報として伝達・表現し合う方法を考案することを目指している。 ここまでの研究の初期成果を、国際的学術誌Springer Lecture Notes in Computer ScienceのVol.6772に、論文"Designing Peripheral Communication Services for Families Living-Apart:Elderly Persons and Family"として掲載した。また日本国内の家族に対して実施したフィールド調査の研究成果の一部を、日本人間工学会にて発表する機会を得た。発表後、ドイツはじめ海外の研究機関からの問合わせを受けるとともに、複数の国際会議(International Conference on Ambient Systems,Networks and Technologies,およびICCAS他)より国際会議論文審査委員への招聘を受け現在も委員として活動中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に適合する質的研究手法の開発を順調に進めた。フィールドエントリーとインタビュー開始までに期間を要したが、家族を対象としたフィールド調査を概ね予定通りに実施し、研究成果の公表も国内外の学会等で適宜行った。コミュニケーション支援ツールのプロトタイプ開発にやや遅れが出ているものの、必要な基礎研究はある程度進捗し、準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(a)フィールド調査に基づく質的研究手法を用いて、を離れた家族の生活世界の非対称性と、家族が日常に用いる家族固有の周辺的コミュニケーションの形態、家族にとって特別な意味を持つ生活風景・人物・習慣・モノ・出来事など、家族の「愛着」の対象を明らかにするフィールド調査を継続して実施する。 (b)離れた家族の生活世界を緩やかにつなぐコミュニケーション支援の技法を、プロトタイプとして具体化する。今回は、コミュニケーション支援ツールのプロトタイプ開発に向けて、まず聴覚と触覚情報の伝達・変換・表現方式の構築に重点を置く。
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