研究課題/領域番号 |
23300265
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
芝崎 学 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (00314526)
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研究分担者 |
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30220081)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 皮膚血流量 / 紫外線 / 赤外線 / 温度感覚 |
研究概要 |
本研究は、熱中症予防のための衣服に着目し、これらに密接に関係する体温調節から最適な衣環境を提言することを目的とする。温度受容器の活性化と皮膚の熱放散反応は密接に関係しているが、その相互作用メカニズムは不明である。 前年度の太陽光照射による皮膚温上昇を考慮し、本年度は人工太陽光の照射による皮膚温上昇度を実験的(時間・距離)に評価し、この温度上昇を考慮した温度感覚実験を実施した。人工太陽光照射による皮膚血管拡張反応を2次元的に評価した。また、照射時間に依存するが、照射による皮膚血流量の増加が持続が観察されたことから、照射による皮内における血管拡張物質の持続的影響が示唆された。この結果から、紫外線によるヒスタミンの変化を評価するために、マイクロダイアリシス法を用いた予備実験を行った。 温度感覚実験では再現性を高めることが非常に難しく、さらなる改善の余地があった。個人間及び個人内の皮膚温反応の分散は予測範囲内であったが、VASを用いた温度感覚評価では繰り返しの影響だけでなく、時間的影響が懸念された。また、より詳細な温度感覚評価方法を取り入れるためにVASを用いたが、被験者がその手法を理解することと習熟することに個人差が大きく、事前の習熟期間が必要とされた。 人工太陽光照射による皮膚血管拡張評価は、非接触型皮膚血流量計の有用性が実証され、接触型加温計で見られる均一的な血管拡張ではなく、比較的大きな血管及び密度の高い血管網において持続的な皮膚血管拡張維持が確認された。 この結果に基づき、皮内のヒスタミンの測定を実施した。マイクロダイアリシスの留置によるヒスタミン上昇の影響は除去できないが、相対的な反応から人工太陽光照射によるヒスタミンの増加が確認された。紫外線照射に起因すると思われる増加は確認できたが、個人差が大きいためにアプローチ方法の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
局所的温度感覚評価のための研究アプローチを模索するにあたり、VASを応用した温度感覚評価方法の確立に時間を要した。個人内偏差は数回のアプローチで最小化されるが、実験初期の評価がその後の評価に影響を与えている可能性があり、その影響を最小化する方法を模索している。 ヒスタミンの評価を定量的に実施したいが、個体差が大きいだけでなく、留置部による差も懸念され、安定した定量的な結果よりは相対的な評価方法を検討する必要がある。 ヒトを対象とした人工太陽光照射実験では、繰返し実験において、その前のトライアルの影響が懸念され、予測以上に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
温度感覚実験では詳細な感覚の再現性を高めることが非常に難しかったことより、人工太陽光照射後の温度感覚実験ではより大きな変化を前提とした実験を計画する。また、より実践的な評価をすることがH25年度の成果として必要であるため、紫外線の影響の検討は、偏光レンズ・フィルム、UVカット布地、UVカットクリームを用いる。 UVカット率が統一できないこと、クリームは皮膚に添加するために同一に評価できないことから、1)複数種類のUVカットクリーム、2)それ以外の比較、にわけて実験を実施する。
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