研究課題/領域番号 |
23300267
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
渡邊 敬子 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (80369652)
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研究分担者 |
高部 啓子 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (00206872)
森下 あおい 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10230111)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 衣服設計 / 高齢者 / 障害者 / 体表変化 / 3次元計測 |
研究概要 |
高齢者や体つきに特徴のある人々のために、試着・補正なしに身体に適合する衣服を迅速に生産・提供できるよう、パターンを自動補正する「異体グレーディング」の理論を得るため、身体の立体形状の特徴を分析し、型紙形状との関連を定量的に検討した。 まず、健康な若年女性230名と高齢女性107名の体幹部の3次元計測データから独自の2種類の相同モデルを作成し、DHRC-HBS人体形状統計解析ソフトを用いて多次元尺度法と主成分分析とにより個人差を表す軸を明らかにした。 さらに、体幹部相同モデルをLookStailorXに取り込み、個々の体表面展開図を作成した。これをアパレルCADに取り込み、各部の寸法や角度を求めた。個人差を表す軸ごとに大・中・小の3つにグループ分けを行いその差について検討した。さらに、これをX,Yの移動量として型紙を補正し、着用実験を行い、その効果について検討した。 一方、スーツなどゆとり量の少ない衣服を着用し座位姿勢をとると、誰もが窮屈に感じる。また、手すりにつかまるなどの動作を繰り返すことで後アームホールが破れるといった問題も生じる。そこで、車いす利用者の上衣に適したゆとりの設定を目的に、座位姿勢時の動作による体表長の変化を捉えた。 被験者は女子大学生20名で、右体幹部および上腕部にアイライナーで格子状の基準線を描き、5つの姿勢の3次元計測を行い、その格子長の変化を捉えた。その結果、立位姿勢と座位姿勢で背面上部の幅や丈に差がみられ、車いす利用者が既製衣料着用すると動作をしなくても背面の寸法が足りなくなっていることが考えられた。上肢の動作によってこれらの部位にさらに伸展がみられ、手すりにつかまるなど大きな上肢動作をすることの多い車いす利用者にとってはゆとりの量が足りないと考えられた。今回、定量的にとらえられた体表の伸びを衣服設計に応用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、1)試着・補正なしに衣服型紙を体の形に合わせる方法について検討する2)高齢者や障害者の動作に対応したゆとりや構造を明らかにし3)オンデマンドファッションの実現に向けた諸問題について検討することを目的とした。 1)試着・補正なしに衣服型紙を体の形に合わせる方法 若年女性230名と高齢女性107名の体幹部の3次元計測データを、立体のまま統計解析できるように相同モデルを作成し、身体立体形状の個人差の要因を特定し類型化を行う。解析結果に相同モデルの違いが与える差や統計手法(主成分分析と多次元尺度法)による差など検討した。さらに、高齢者と若年の個人差の要因の違い、あるいは同数で解析した場合の個人差の要因などについて検討した。 2)高齢者や障害者の動作に対応したゆとりや構造 まず、肢体不自由者、特に車椅子利用の若年女性の日常動作について観察と聞き取り調査を行った。一方、被験者(健常者)の体表面に格子を記入し、その特徴的な動作をしている時と同じポーズとってもらい3次元計測をする。このデータから3D-rugleで格子の長さ算出し、姿勢間の差(伸縮量)求めた。また、立位時と座位の差から、立位姿勢を基準に設計した衣服では、上背部の幅や丈が足りないことが明らかになった。また、動作に必要なゆとりが明らかになった。 3)オンデマンドファッションの実現の可能性 4名の車いすを利用する中年女性を対象に3次元計測を行い、3次元CADによってスーツを製作し、試着を行った。その結果、3次元CADによって座位姿勢で体つきの個性の強い被験者に合うスーツが設計可能なことが分かった。また、特定の車いす利用者個人を対象にしたジャケットであっても同じサイズであれば他の車いす利用者にも一般の既製服よりも着心地がよいと評価されることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、1)試着・補正なしに衣服型紙を体の形に合わせる方法2)高齢者や障害者の動作に対応したゆとりや構造3)オンデマンドファッションを実現にかかわる諸問題について検討し4)これらをまとめる。 1)試着・補正なしに衣服型紙を体の形に合わせる方法について 昨年度は、高齢者と若年の個人差の要因の違い、あるいは同数で解析した場合の個人差の要因などについて検討した。これと体表面展開図の対応関係について検討し、論文にまとめる。 2)高齢者や障害者の動作に対応したゆとりや構造について 座位姿勢と立位正常姿勢、あるいは座位の動作時比較して、体表長の差(伸縮量)定量的に求めた。これに基づいて、座位姿勢のための原型作成法について検討する。また、動作に必要なゆとり量が明らかになった。デザイン性を損なわず、これを型紙に付与できるように構造とその効果を検討し、まとめる。 3)オンデマンドファッションの実現の可能性について 実際に障害者や高齢者に衣服の設計を行い、オンデマンドファッション実現に向けた課題を明らかにし、その対応策を検討する。
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