現在わが国では食品の抗酸化力の統一指標のデータベース化を通じて、食品由来の抗酸化物質の普及や疫学研究のツールとしての活用を図り国民の健康に寄与することを目標に掲げている。この社会的背景を鑑みて本研究は、ポリフェノール系物質の抗酸化力統一指標であるORAC(活性酸素吸収能力)に着目し、ポリフェノール含量が比較的高い野菜を対象に、食品成分表を用いた栄養価計算と同様の要領で野菜のORAC値を食事管理に活用することの有用性や留意点を明らかにすることを目的とした。本年度は加熱野菜料理4種と非加熱野菜料理1種を選定して、各料理全体および料理に使用した食材30種(非加熱と加熱)の成分を脂溶性と水溶性の画分に分け、それぞれポリフェノール量と抗酸化力を改良ORAC法とDPPH法を用いて測定した。結果、①ショウガ以外の食材はポリフェノール量、抗酸化力ともに水溶性画分の寄与度が高かった。②非加熱と加熱食材のポリフェノール量および抗酸化力には大きな差は認められず、個々の食材に対する加熱の影響は少ないことが示唆された。③水溶性と脂溶性画分の値を合算したものを総ポリフェノール量、総抗酸化力として3測定法の相関を検討したところ、総ORAC値と総DPPHラジカル捕捉活性値の間、総ORAC値と総ポリフェノール量の間にともに有意な相関が認められた。④各食材のデータから算出した料理1食分の予測値と料理1食分の実測値を比較検討したところ、DPPH法に比べてORAC法で得られた値の方が総ポリフェノール量の挙動とよく一致しており、食事管理という視点からの抗酸化力指標としてはORAC法の方が妥当であることが示唆された。今後は各料理における予測値と実測値の相違の要因(例:アミノカルボニル反応による抗酸化力の増加等)を明らかにし、ORAC値をデータベースとして使用する際の換算係数を検討し、適切な利用法を考える必要がある。
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