24年度に引き続き、人パネリストの咀嚼・嚥下挙動の把握を進めた。様々なパネリストにより、各種食品試料の咀嚼特性および嚥下特性(咀嚼力、咀嚼筋運動量、咀嚼頻度、咀嚼時間、唾液分泌量、唾液分泌速度、呼気流量、呼気流速、嚥下頻度など)のデータを集積した。その結果、研究室開発の既存の咀嚼モデル装置の性能で対応しない範囲のあることも明らかとなり、実際の人パネルに則した咀嚼・嚥下特性を有する装置への改良を進めることとなった。 装置に組み込む人工生体膜に関しては、人工生体膜を口腔内部と同等の広い表面積で保持すること、人工生体膜が常に湿度の高い状態に置いたまま咀嚼モデル装置に導入する工夫を施す必要が認められた。また、人工生体膜への香気化合物の吸着特性の測定を進めた。この測定に併行して、多数ある香気化合物の吸着特性を示唆するLogPの値について、既報の値を収集し、コンピューターシミュレーションによる計算値を求め、全部で967化合物の値を整理し、データベースとして使用できるように整えた。 香気放散現象の把握においては、食品に存在する様々な成分による影響を把握した。食塩、ショ糖といった調味料成分や、炭酸ガスなどの共存によるアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、ラクトン類などの香気化合物の放散量がどのように変化し、また人パネリストがその香気強度をどのように知覚しているか測定した。 人工喉装置の構築は、咀嚼モデル装置の改良と共に、今後さらに発展することになる。
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