研究課題/領域番号 |
23300275
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (30220081)
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研究分担者 |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (00264755)
小城 勝相 放送大学, 教養学部, 教授 (10108988)
根岸 裕子 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教 (50523841)
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キーワード | 精神性ストレス / エストロゲン / 閉経後女性 / 閉経モデルラット / 植物エストロゲン / 血圧調節 / 血管収縮反応 / 機能性食品 |
研究概要 |
1.雌性ラットにおける精神性ストレス時のエストロゲンによる循環反応緩和のメカニズム (1)急性ストレス時の昇圧反応におけるAngiotensinII/NADPH oxidase系の関与とエストロゲンの抑制効果 成熟雌ラットを卵巣摘出+プラセボ群とエストロゲン補充群の2群(各群8匹)に分けた。17週齢でケージ交換ストレスを負荷し、血圧・心拍数上昇反応のエストロゲンによる抑制効果について、NADPHオキシダーゼ阻害薬(Apocynin)、Angiotensinタイプ1受容体拮抗薬(Losartan)の前投与の影響を比較検討した。また、ストレスによる血漿レニン活性の変化やアンジオテンシンIIの静脈内投与による昇圧反応についても検討した。その結果、エストロゲンは、精神性ストレス時にNADPHオキシダーゼ系を介してストレスによる心拍数上昇反応を抑制し、Angiotensinタイプ1受容体に作用するAngiotensinIIを減少させることによって、昇圧反応を抑制することが示唆された。 (2)慢性ストレスによる循環調節機構への影響とエストロゲンの関与 上記と同様に作成した2群のラットで間欠的低酸素による昇圧反応をエストロゲン補充が抑制したが、この機序として、エストロゲンが抵抗血管の拡張性を調節すると考えられた。 2.卵巣摘出ラットへの葛蔓イソフラボン慢性経口投与による精神性ストレスへの影響 卵巣摘出ラットを用いて、葛蔓のエタノール抽出物の慢性投与を行い、精神性ストレスによる循環反応への影響を検討した。葛蔓抽出物投与群では、非投与群と比べて体重が減少したが、ケージ交換ストレスによる心拍数・血圧反応には差が見られなかった。 3.女性を対象とした精神性ストレス負荷時の血圧・血管反応における抗酸化ビタミンの効果 閉経前・後の中年女性16名(各8名)を対象に、酸化ストレス抑制効果のあるVitaminCの経口投与・非投与下でカラーワードテスト(CWT)による精神性ストレス負荷を行なった。閉経後女性でのみVitaminCの投与後にCWTによる上腕動脈血管床の血管抵抗や血漿ノルエピネフリンの増加反応が抑制された。また、閉経後女性は閉経前に比べて、安静レベルでの血管内皮機能の低下が見られ、この低下はVitaminC投与で改善できたが、精神性ストレス後にはこの効果が見られなくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費を使用して、ラット用血圧送信器を増やすことができ、テレメトリーシステムを用いたin vivo実験が効率よく実施できるようになった。また、HPLC用オートサンプラーや微量サンプル用ナノドロップを購入できたため、血漿カテコラミンやRNAの測定効率がアップした。さらに、各種測定キットが購入できたため、エストロゲンの作用を見逃すことなく検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおりにほぼ推進できると考えている。ただ、ラットに対する慢性ストレスとして、他者同居による慢性精神性ストレスを考えていたが、毎日ルームメートが変わるペアハウジングストレスを実施したところ、有意な血圧上昇は3日間ほどでその後、血圧は元に戻ることが判明した。そのため、慢性ストレスを間欠的低酸素負荷で行なうことにしたが、今後は慢性精神性ストレスの負荷法を開発して、モデルラットの作成を目指し、精神性ストレスによる血管機能障害のメカニズムを解明したいと考えている。
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