研究課題/領域番号 |
23300278
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 重信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 体内時計 / 運動 / 肥満 / 生活習慣 / インビボイメージング |
研究概要 |
前年度にインビボイメージングによる肝臓、腎臓、唾液腺での体内時計遺伝子発現変化を調べる方法を確立した。Per2::luciferaseのノックインマウスを用いて、4時間おきに、1日6回の計測を行い、リズムの位相、振幅を測定した。末梢の体内時計の位相が、食事時間に同調することが分かっているので、まずは1日4食、5食、6食の分食の、位相に及ぼす影響を調べた。その結果、食餌間隔を一定にし、一定量の餌を分食して与えた場合、臓器すべての体内時計の位相は影響を受けなかった。すなわち、このような食パターンは体内時計を動かせないことが分かった。次に、ヒトの食パターンを模倣するモデルとして、1日3食を与えた。朝、昼、夕と与える群と、夕、夜中、朝と与える群を用意した。つまり、3食のうち1食を昼にとるかあるいは夜中にとるかの違いによる影響を調べた結果、夜中にとる群は、末梢臓器の時計の位相が大きく後退することがわかった。次に1日3食にし、夕食の時間のみ遅らせるプロトコールで実験を行った。これは、ヒトの食生活で夕食が遅くなるモデルである。その結果、夕食を午後7時から、午後10時や11時と遅らせていくと、末梢時計の位相は大きく遅れることが分かった。そこで、午後11時に半分の餌を、午後7時に残りを与える分食を行ったところ、位相の遅れが改善した。以上の結果から、1日3食のスケジュールでも、食べ方により、末梢時計の位相は変わること、夜遅い食事は体内時計を夜型に変えることが分かり、分食により改善することから、夕食が遅い人に直ちに応用出来る研究成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず世界に先駆けて、インビボイメージングにより末梢時計のリズムを可視化できたことは、大きな研究成果である。この方法は、容易にかつ安価にできるという特徴を有するため、汎用性が広いと考えられる。また、食事性のリズム形成が、ヒトの食事パターンを類する方法で再現できたことは、非常に画期的な研究である。この成果はそれぞれ、学術論文発表し、かつ、一般新聞の紙面に取り上げられるなど、社会的発信も充分行うことができた。このような視点から、本研究は順調に進んでいると判断して良いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、時間栄養学と時間運動学の接点の研究を拡大していく予定である。まず、45%脂肪の高脂肪食を負荷した状態で輪回し運動にアクセスできる時間を時に1日を6等分した4時とした時に、どの時間帯の運動が一番抗肥満効果が見いだせるかを調べる。すなわち朝、昼、夕のいずれの運動が効果的か否かを調べる。一般的に、マウスの食パターンは夜間の最初に大きく、明け方は少なめの摂食活動を示す。このような食事パターンが、運動負荷によりどのように変化するか否かを調べる。つまり、朝運動+夕食事、あるいは、朝食事+夕運動などの組みあわせが出来る可能性があり、運動と食事のタイミングの組み合わせが、肥満予防に良い可能性が考えられる。次に、運動時間を例えば昼間に固定し、餌を運動の前に与えるか、あるいは運動後に与えるかの2つのグループを用意する。この場合、餌は一定量与える場合と、4時間の時間制限を設定する場合2通りを用意することにより、運動と食欲との関係も調べることが可能となる。 運動と食事パターンの組み合わせ状態で、代謝ケージによりエネルギー代謝や呼吸商も計測し、これらのリズム性発現に対する影響についても調べる。
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