研究概要 |
本研究の目的は,(1)学生の日頃の行動を個人情報保護に十分注意したうえで把握し,カウンセリングによる判定を受けるべき学生(以後「要判定学生」と呼ぶ)を早期に発見する手法の確立と,(2)判定結果に沿いサポートを行うに際し担当者間で互いのケア内容や学生の行動状況の共有と,サポートの効果を見るため学生の行動を把握する事を可能にする学生ポータルサイトシステムを開発することである. この目的を達成するため4年間の研究期間の初年度である平成23年度は,3つの研究課題についてそれぞれ次の様な実績を達成した。 1.学生情報の整備 学生の行動を把握するために利用できる情報として,学生が携帯するICカードによる授業の出欠,建物の出入りや研究室への出入り等の入退室情報を管理するシステムを開発した.具体的には,大学で運用しているポータルサイトに対し,カードリーダからのデータを取り込むAPIを付加実装し,実際にこのポータルサイトを平成23年度後期の授業で運用評価した.さらに,このポータルサイトはメールや教務システム等様々なサービスの利用状況による行動把握やe-Learningの学習履歴情報も加えた学生情報の一元的に活用できるよう,システムの拡張が出来るように仕様の追加を行った. 2.学生情報アクセス権限の管理 本システムでは学生の個人情報を扱うため,個人情報保護に関するポリシーを平成23年度に暫定的に確立した.そのうえで,ポータルサイトに学生情報へのアクセス権限管理機能を付加するための機能整理を行い,権限機能実現の準備を完了した. 3.要判定学生抽出システムの開発 ICカードによる入退室情報から要判定学生を抽出する手法の開発を目的とし,既に数年前からICカードを利用した入退室管理を行っている企業の履歴情報を用い,要判定者抽出システムを開発した.この判定システムの有用性を評価するために,抑鬱症状や鬱病等を判定するアンケート調査結果とシステムの抽出結果とで検定を行い,システムによる判定が有意であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において,1.学生情報の整備は予定通り実施が出来た.一方2.学生情報アクセス権限の管理についてはセキュリティポリシーの確立は出来たが,権限機能の実現はその準備までで完了していない(平成24年度前半に完了の予定).また,3.要判定学生抽出システムの開発は予定していた手法の確立だけではなく,実際の履歴情報を用いてその評価を行うことができ,当初の予定を上回る成果となった.
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今後の研究の推進方策 |
1.学生情報の整備 平成23年度に開発したICカードリーダとのデータ入出力用APIを用い,複数のICカードリーダからの情報を一元的に活用できるシステムを整備する. 2.学生情報アクセス権限の管理 平成23年度に未完了となっているアクセス権限機能の実装を前半に完了させ,さらに大学の統合認証システムに組み込むことで統一的な権限管理の実現を目指す. 3.要判定学生抽出システムの開発 カウンセリング担当者が様々な観点から定めたルールを設定することで要判定の学生を抽出するシステムを,大学の既存ポータルサイト上に構築する.またポータルサイトを平成23年度に実際の授業で運用してきた教員の協力のもと,機能の洗い出しを行う.
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