加速器質量分析(AMS)法は、微小試料からの極微量元素を高精度かつ短時間に測定することができる高感度質量分析装置である。特に半減期が5730 年の炭素14(14C)に対するAMS 測定は、動植物に由来する年代を決定する年代測定法として幅広く利用され、人類の文化と歴史、宇宙科学や環境科学、そして医学・薬学分野の重要な測定ツールの一翼を担っている。山形大学は、東北・北海道地区の大学法人として初となる最新型のコンパクトAMS と試料調整のためのグラファイト調整システムを平成22 年3 月に山形大学総合科学研究所に導入した。本申請では、世界最高レベルとなる0.1%の測定精度を目標に、AMS 装置の高感度化と安定化のための基礎研究、そして試料作製システムの高速自動化の開発を推進し、文化財科学の発展に貢献することを目指す。 本年度は暦年代が決まっている樹木年輪試料についてAMS測定を行い、対応データベースである炭素14年代暦年較正曲線(International radiocarbon calibration curve; IntCal09)との比較を行った。使用する年輪試料は、光谷 拓実先生(総合地球環境学研究所、前奈良文化財研究所)から提供頂いた鳥海神代杉(秋田県と山形県にまたがる鳥海山の麓から掘り出された杉でB.C. 965-551)、そして大山 幹成先生(東北大学植物園)より提供頂いた仙台城三の丸杉(A.D. 1662-1965)である。その結果をフィードバックさせて、AMS測定の正確度・精度の向上(測定誤差0.1%)を行い、装置の系統的誤差と達成に必要な試料の微量化を評価した。
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