研究課題/領域番号 |
23300326
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
矢島 國雄 明治大学, 文学部, 教授 (70130838)
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研究分担者 |
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 主任研究員 (00392548)
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会科学研究科, 助教 (40392550)
本田 光子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部, 特任研究員 (60289642)
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キーワード | 虎塚古墳 / 装飾壁画 / ベンガラ / 保存環境 / 水分移動 / 生物劣化 / 防カビ / 殺菌 |
研究概要 |
虎塚古墳石室内環境の過去39年に及ぶ計測データ(アナログ)のデジタルデータ化を進め、最近10年分については終了し、解析を進めている。引き続き、デジタルデータ化を進める。 壁画顔料、壁画白土、壁画構造の解析調査は、明治大学に保管されていた発掘調査時に回収した石室内壁の過去における剥落部分の小破片を使って、分担者の犬塚、谷口、本田および協力者上條朝彦がそれぞれ各種顕微鏡による調査、XRF・XRD・TF-IR・GC/MS・シンクロトン放射光・μFT-IRによる理化学分析を実施した。現状では顔料、下塗りの白土ともに、石室壁体への塗布時に何らかの膠着材が使われたという積極的な証拠は得られていない。引き続き、残余の資料による継続的な解析を続けるが、現在までの結果について6月開催の文化財保存修復学会で報告する。 虎塚古墳石室内部での壁画の現状の継続調査は、観察室内でのカビの発生という問題が発生したため、平成23年度には壁画石室保護のガラス扉の開扉は行わないこととしたため、実施できなかった。平成23年度中に観察室内のカビ並びにバクテリアの処理を行って、平成24年度の調査にゆだねることとした。 上記、観察室内で発生したカビについては、連携研究者木川りか並びに協力者佐藤嘉則による調査と処置、および文化庁建石徹の協力による紫外線殺菌灯による処置を実施した。保存躯体内への入室調査が、春・秋の公開前後の確認及び閉鎖処置時以外にはできないため、春の公開が終了したのちの閉鎖処置時(平成24年4月末)に処置結果の調査を実施する予定である。 生物劣化のもう一つの要因である植物の根による被害防除のために、石室を覆う墳丘上に生育している植物種の同定並びにその根の確認を予備的な調査として実施した。石室内の根の採集及びその同定は平成24年度に石室内への入室が可能となったら実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保存躯体の観察室内でカビが発生したことにより、その調査と同定、観察室からのカビ等の排除と再発防止を進める必要が生じ、石室内へのカビ・バクテリアの侵入による影響を生じさせないため、保護のガラス扉は開扉しなかった。このため、予定した石室内での壁画の直接的な調査(壁画の高精度デジタル写真撮影・高精度顕微鏡写真撮影・壁面水分量の測定)は平成23年度には実施できなかった。また、壁画の構造解析も途上にあり、壁画と同構造のテストピースを製作しての実験は実現できなかった。それ以外では、一部予定を前倒しして実施したものもあり、深刻な遅れは生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初予定に沿った調査を進める。 過去のデータ処理、写真のデジタル解析は矢島の下で進め、共同でその評価を行う。 顔料分析及び壁画の構造解析には、犬塚、谷口、本田、上條に加え、連携研究者に志賀智史を迎え、調査体制を強化したい。 生物劣化問題に関しては、犬塚、木川に加え、新たに佐藤嘉則を連携研究者に迎えて調査体制を強化したい。また、石室内植物の調査は、パリのサーヴェイ株式会社の協力を得て進めることとしたい。
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