研究課題/領域番号 |
23300326
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
矢島 國雄 明治大学, 文学部, 教授 (70130838)
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研究分担者 |
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (00392548)
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (40392550)
本田 光子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, その他部局等, 研究員 (60289642)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 装飾古墳 / 白土 / 赤色顔料(ベンガラ) / 物理的劣化 / 温湿度変化 / 水分環境 / 生物被害 |
研究概要 |
虎塚古墳壁画の春・秋年の一般公開後の保守点検作業時に、各種の現地調査を実施した。壁画顔料の状況の顕微鏡写真撮影、壁面水分量の測定、石室及び観察室内の環境測定ならびに生物劣化要因調査である。観察室におけるカビおよびバクテリアの駆除と、石室内に侵入している地中生物(アリ、クモ、トビムシ)の駆除が課題である。また、石室に伸長している植物根については、サンプルを採取し、(株)パリノ・サーヴェイに種の特定等の調査・分析を依頼した。予備的な結果は出たものの、より精細な分析を継続する予定である。 現地調査は限定的な機会しか行えないが、各分担研究者及び研究協力者による東京文化財研究所、筑波大学、九州国立博物館における採集資料の分析ならびに実験調査を通年にわたり実施した。 虎塚古墳壁画から崩落した実資料のうち、白土と考えられてきた層をXRDにより再分析し、風化して一部が粘土鉱物化した凝灰岩(部田野石?)であることを確認した。白土層というより、白色モルタル層と呼ぶべき厚みのあるペーストが用いられていたことが判明した。また、虎塚古墳石室内の赤色顔料および、白色モルタル層表面がなんらかの要因により凝集しており、粉末化・剥落の原因となっていることから、その検証のために、レプリカづくりの準備を行った。部田野石を切り出し、100X100X30mm大の石室壁面サンプルを製作し、凝灰岩由来の白色粘土を採取し、現地で入手可能な沼鉄(鉄バクテリア)を採取し、焼成することにより赤色顔料を得た。これらのサンプル材については、虎塚古墳壁画の構造物と同一とみなせるか否かの検証を行う一方、部田野石サンプルに白土及び赤色顔料を塗布し、多様な水分環境における時間変化を観察する実験を開始している。 この他、明治大学と東京文化財研究所において、基礎的な研究として、過去40年に及ぶ石室内の温湿度計測データの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
壁画の微細な意味での構造の解析に明快な答えが出ず、壁画の製作技法の詳細を確定的とするに至らなかった。このために各種の実験に供するサンプル製作が遅れたことにより、製作したサンプルをつかっての時間を要する実験に着手するにいたったのが年度末に近くなってしまった。このため、意味のある実験結果が得られるのは次年度に入ってからということになる。当初予定していた燻蒸実験を進める前提の調査が完了するのは予定より遅延することとなる。 また、調査の進展に伴い、観察室におけるカビとバクテリアの駆除が大きな課題となってきたので、これに対する対応としての燻蒸も新たに視野に入れる必要が生じてきた。製作したサンプルによる実験結果などに一応の目途が立ってくれば、遅れを解消した実験を準備できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
壁画の物理的な劣化(主として水分環境によるものと考えているが)の要因の特定が急務である。このため、装こうを含む専門的な知識の提供をお願いする一方、製作したサンプルでの実験を進める。ただし、時間変化を追跡するため予想外に時間を要すると考えられる。 一方、カビやバクテリア、地中生物による劣化の心配もあり、早急に効果的な対処法(燻蒸を含む)を検討し、実験を行う必要がある。可能な限り予定した調査と実験に取り組むつもりではあるが、現地調査は保存上の問題から春・秋の一般公開後の点検調査及び保守作業時に並行してそれぞれ1日という限定的な機会しかない。こうした制約から、予定した調査を完了し、それに基づいた実験を進める上で、時間的な制約が大きい。このため、予定した実験の一部は実施困難になる可能性があることは否定できない。 調査の進展に伴って、新たな課題も浮上するなど、当初予想した以上に問題は複雑で、基本的な問題の整理と劣化要因の一定の絞り込みまでは進めるとしても、効果的な対処法を見出し、確定させるまでには至らない恐れがある。このためには、本研究を基礎とした次の調査と実験を計画する必要があろう。
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