研究課題
1.津波で被災した自然誌資料に発生したカビの調査:前年度までの調査で、津波で被災した文書・紙資料にはセルロース分解能のあるスタキボトリス属やペニシリウム属のカビが多く発生することがわかっていたが、今回は植物標本の台紙に発生したカビを詳細に調査した。その結果、やはり塩耐性のあるペニシリウム属のカビが多くみられるという結果が得られた。2.古墳など、環境制御の難しい現場における対策についての検討:常に高湿度にある古墳環境では、きわめて微生物が繁殖しやすい状況にあるが、数年にわたる微生物環境のモニタリングデータをもとに、除菌清掃などの対策の効果を検証し、各種対策の有効性を検討した。その結果、その現場において微生物検出数に応じて除菌清掃などの対策を実施するかしないかを決定するための基準値を設定することができた。3.寺社等空調設備を有しない施設においてカビを予防するための除湿システムの検討:寺社などで比較的外気の影響を受けやすい文化財の保存環境においては、湿度を有効に制御することを目的に、デシカント式除湿システムを低温環境でも稼働できるようにする検討を進め、梅雨時や夏季などに有効な対策になることが示された。4.日本画の紙本、絹本にカビの発生する速度と湿度の関係についての調査:紙本、絹本の試料を用いて実験を行ったところ、糊や膠などの膠着材を使用した際、明確にカビの発生速度が速くなることが示された。本研究の総括として、いわゆる博物館施設だけではなく、空調設備を有しない施設、古墳環境など微生物のコントロールが一般的に難しい場所での制御法に一定の方向性を見出すことができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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保存科学
巻: 54 ページ: 75-82
巻: 54 ページ: 121-131
巻: 54 ページ: 133-144