研究課題/領域番号 |
23300331
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩瀬 隆之 京都大学, 総合博物館, 准教授 (90332759)
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研究分担者 |
角 康之 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (30362578)
佐藤 優香 国立歴史民族博物館, 助教 (40413893)
元木 環 京都大学, 学術情報メディアセンター, 助教 (80362424)
宗本 晋作 立命館大学, 理工学部, 准教授 (20581490)
水町 衣里 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (30534424)
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キーワード | 展示評価 / 展示デザイン / ハンズオン展示 / インタラクション |
研究概要 |
本研究の目的は、「博物館にデザイン-評価サイクルをもたらす展示評価ツールキットを開発すること」である。平成23年度は、博物館において必要な展示評価を,展示空間評価,体験評価,インタラクション評価に分類し、それぞれで求められる展示評価とデザインの関係について分析した。 展示空間評価に関する分析では、一般的な人手による観察法のバラッキや不正確さの理由を明らかにし、近赤外線センサシステムを用いたタイムサンプリング法による自動展示評価のための補正アルゴリズムを開発した。また展示鑑賞行動の観測と、アンケートによる心理状態(意欲、学習度)から、ベイジアンネットワークを用いて観測行動と心理状態、展示の構成要素の関係を説明するモデルを確立した。これらを元に、展示空間デザインにおいて設計変数にフィードバック可能な展示評価項目の絞り込みを行い、展示空間を構成する要素の抽出と展示コンテンツ作成のワークフロー分析を実施した(塩瀬、宗本、元木)。 体験評価においては、展示デザインの疑似体験に能動的に関わることの学習効果を明らかにするため、概念地図法からクロスリンク数や分岐概念数を評価項目として採用可能であることを明らかにした。また博物館での体験展示をデザインするために、来館者属性を把握するアンケート設計を行い体験型展示スペースにおいて試行した(水町、塩瀬)。 インタラクション評価においては、PhotoChatと呼ばれるコミュニケーション支援システムを基盤に、来館者の興味対象の移り変わりや何気ない会話を計測した。このデータを時間圧縮したものを可視化し、データ解釈に基づいて新しい見学者をガイドするシステム構築を試みた。特に複数の鑑賞者が同時にコミュニケーション支援ツールを操作しているときの操作ログや対話、姿勢など多数のパラメータを統合することで興味の深さなど見学者行動の測定を可能にする(角、佐藤)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
展示評価を,展示空間評価,体験評価,インタラクション評価の3つに分類し、それぞれで求められる展示評価とデザインの関係について分析するアプローチを試行したが、いずれの分類からもバランスよく成果が得られており、研究進捗は順調である。しかし各種博物館の経営基盤を鑑みれば、より安価な展示評価ツールキットの開発が強く要請されることが分かったため、展示評価キューブなど有力なツールキットの候補をさらに複数検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
「評価」という表現そのものが来館者やワークショップ参加者にネガティブな印象として働くことが根深いことから、複数の視点の評価コメントをポジティブに残せるような展示評価キューブを試作した。今後は、この展示評価キューブをツールキットの一部とした展示評価ワークショップを試行し、展示評価をデザインにフィードバックするための知見を得るアプローチを研究プロジェクトに新たに加える。
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