本郷次雄菌類図譜は日本の菌類研究上極めて重要な資料である。この資料を整理、公開し、また分子的手法を用いたDNAバーコーディングなどの情報提供などを行なうことでアマチュア菌学の活性化を図るのが本研究の要点である。 34冊の標本ノート1500点の画像、6000点の標本の確認データベース化及び論文引用状況のデータベース化を終えた。これらの情報を元に学会発表などで順次公開し、一部の情報はweb公開を試みている。 標本はタイプ確認をすすめており、非常に多くのisotypeおよび、小数のHolotypeが含まれていることを確認した。同時に標本の採集地確認を進め、非常に多くの標本が滋賀大学および本郷家の周辺で採集されていることを確認し、同コレクションが特に関西地方の菌類研究に重要であることを確認した。 本郷標本はパラホルムアルデヒドによる燻蒸が繰り返されDNAの断片化が進んでいるが、これを1)短鎖DNAの分析で利用することを試みた。属特異的なプライマーで50ベースから150ベースという短いシーケンスを得ることで既知のシーケンスとの一致を検討させることができるか検討を進めたところ、Cortinarius属、Boletus 属で成果を得ることができた。これらは一部学会発表を終えており、原罪論分化を進めている。2)本郷標本の顕微鏡などによる組織確認による種の概念確認のための利用を部分的に進めており、Endo et.al (2014)、 遠藤(2015)など成果も上がっている。小林(未発表)によるアセタケ属の検討も部分的に進めた。3)同一産地から採取した生の標本でのシーケンスをするなど、DNAバーコーディングのリファレンス資料整備を進めており、現在データベース登録とレビューを共同研究者らとともに執筆している。
|