研究課題/領域番号 |
23300336
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宮内 崇裕 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00212241)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 離水海岸地形 / 潮間帯 / 海域震源断層 / 古地震 / 岩石海岸地形カタログ / 地震発生予測地図 |
研究概要 |
平成25年度は,北海道日本海沿岸,三陸海岸,三浦半島,台湾東岸の岩石海岸を中心にして,および1970年代国土地理院撮影の縮尺1/10,000大縮尺空中写真の地形判読によって,現成・離水潮間帯波食地形のマッピングを行い,岩石海岸カタログを作成した。その中で重要地点において離水年代試料の採取・地形断面測量を行った(研究代表者および連携研究者で分担対応)。その成果をまとめると以下の通りである。 1) 北海道沿岸では,奥尻島,松前半島,亀田半島において調査を行った。完新世離水海岸地形のレベルは,多いところで2つ(各地域で高位レベルで最大7m,低位レベルで最大4m前後)である。現世波食棚の発達の良い奥尻島,松前半島は次期地震隆起の可能性が大きい。 2) 三陸海岸・陸中海岸では完新世の離水海岸地形は分布せず,平均的には沈降傾向が示唆された。しかし,約1000年前に間欠的な地震性地殻変動に伴う隆起(おそらく869年貞観地震に対応)が識別された。地震時隆起量は1m程度である。本地域ではこのような海岸の地震隆起は初めて検出されたことになり,プレート間地震のすべりが深いところ(50km以深)で発生した可能性を示唆する。 3) 三浦半島東岸では,少なくとも5レベルの完新世離水海岸が確認された。野比付近のでは000年前の最高位旧汀線高度は最大25mに達する。これらは従説を更新するデータであり,プレート境界から派生する三浦半島断層群の活動に伴う隆起が付加している可能性を示す。 4) 台湾東岸では,フィリピン海プレートの衝突に伴う短縮変形によって地震性地殻変動が顕著である。東岸中部では最近1500年間に少なくとも3回の古地震を示唆する離水波蝕海岸地形が付着する潮間帯化石群集とともに見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年東北地方太平洋沖地震後に多くの大型関連重点研究プロジェクトが立ち上がり,平成25年度には連携研究者の多くがそれらに継続的に携わった。そのため重点研究によるフィールド調査が優先されることとなり,本課題の調査は制約されることが多かった。しかし,空中写真の実体視によるマッピング自体は室内作業であるため,各担当地域における岩石海岸の地形判読作業は広範囲にわたり進行した。
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今後の研究の推進方策 |
国土交通省によって提供されていたカラー空中写真閲覧サイト(無償ダウンロードサービスを含む)が諸事情より平成25年度末に閉鎖された。本課題における基礎的データ創成の根幹をなしていた大縮尺空中写真の利用が不可能となったことで,本年(最終年)度における地形判読作業とカタログ作成の制約は否めない。残された調査地域において地震性地殻変動を被った可能性のある重要地点を選別し,それらに対して限定的に空中写真購入を実施する方向で軌道修正し,当初の目的達成へ研究を推進する。
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